ネジバナ

ネジバナ（捩花）

ネジバナ（学名：Spiranthes sinensis var. amoena）は、ラン科ネジバナ属に分類される多年草です。別名としてモジズリ（綟摺、盤龍参）とも呼ばれます。湿った日当たりの良い草地に生育し、特徴的な螺旋状の花序が名前の由来となっています。

特徴

ネジバナは、ピンク色の小さな花を多数、細長い花茎に密着させて咲かせます。花は花茎の周りに螺旋状に並び、このねじれた花序が最大の特徴です。花序のねじれは右巻きと左巻きの両方が見られ、その比率はほぼ1対1です。稀にねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体も存在します。

花茎から伸びる子房は緑色で、茎に沿って上向きに伸び、先端につく花は真横に向かって咲きます。花茎の高さは10cmから40cm程度。花は小さく、5弁がピンク色、唇弁が白色です。花の配置が螺旋状のため、花茎の周りにピンクの花が螺旋階段のように並びます。

受粉は、コハナバチなどの小型のハナバチによって行われます。隔離された環境では、自家受粉によって結実することもあります。開花時期は4月から9月です。

葉は柔らかく厚みがあり、根元から数枚生えます。冬期は楕円形ですが、生育期間中は細長く伸びます。根は太く短く、細めのサツマイモのような形をしています。ごく稀に白い花をつける個体（シロネジバナ、シロバナモジズリ）が見られ、園芸愛好家に人気があります。

生育環境

ネジバナは日本全土をはじめ、ヨーロッパ東部からシベリア、温帯・熱帯アジア、オセアニアに広く分布しています。ラン科の植物としては珍しく、芝生や土手、都市公園などの人の生活圏に近い場所で普通に見られます。そのため、雑草として扱われ、芝刈り機で刈り取られてしまうこともあります。一方で、その愛らしい姿から古くから人々に親しまれ、山野草として販売されることもあります。

かつて、野生ランブームの際に変異個体が収集されましたが、栽培が難しく、現在ではほとんど保存されていません。

栽培に関して

ネジバナは江戸時代から栽培されており、庭園にも自生しています。非常に強健で、他の植物の鉢に種子が落ちて発芽することもあります。しかし、長期的な栽培は非常に難しく、植え替えによって共生菌との関係が損なわれると、枯死してしまうことがあります。特別な管理をされた斑入り品種を除き、長年にわたって栽培されている例はほとんどありません。

ネジバナは自然状態でも個体寿命が短く、裸地に種子が飛び込んで生育し、短期間で世代交代を繰り返します。そのため、生育場所の変動が激しく、大群落が形成されたと思えば数年で消滅してしまうこともあります。

ネジバナの根は菌根を形成し、菌類と共生しています。共生する菌根菌の一つは、植物遺体を分解する担子菌のTulasnella deliquescensであり、不完全菌 Rhizoctoniaの完全世代の一つです。

近縁種

ナンゴクネジバナ（南国捩花、学名：Spiranthes sinensis var. sinensis）: 奄美大島以南の南西諸島と中国南部などに分布し、花序に毛がないのが特徴です。
ハチジョウネジバナ（八丈捩花、学名：Spiranthes hachijoensis）: 九州、四国、中部、関東に分布し、2023年に発表された新種です。以前はネジバナと同一種と考えられていましたが、形態やDNA解析の結果、別種とされました。

関連書籍

田代勇司『ネジバナの形態と生理―自然をどう観るか』ソルト出版、1989年1月。ISBN 4915482057

外部リンク

ネジバナの標本（千葉県匝瑳郡 野栄町で1982年7月2日に採集）（千葉大学附属図書館）
* ネジバナ（オーエンス泉岳自然ふれあい館（仙台市））

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