ネスヴィジ城

ネスヴィジ城：ベラルーシの壮麗な遺産

ベラルーシのネスヴィジに位置するネスヴィジ城は、16世紀から18世紀にかけてラジヴィウ家によって建造された、壮麗な城郭建築です。ルネサンス様式とバロック様式が巧みに融合したその建築美と、広大な庭園は、多くの観光客を魅了しています。

ラジヴィウ家と城の起源

1533年、キシュカ家の断絶に伴い、ネスヴィジの領地はミコワイ・ラジヴィウ・チャルヌィとその弟ヤン・ラジヴィウに相続されました。ラジヴィウ家はリトアニア大公国において、絶大な影響力と富を誇る名家として知られていました。1586年には、ネスヴィジはラジヴィウ家の世襲領地として認められ、この地を拠点に彼らの繁栄はさらに発展していきます。

城の建設と変遷

1582年、リトアニア大ヘトマンであったミコワイ・クシシュトフ・ラジヴィウ・シェロトカは、既存の中世の城を基に、3階建ての威風堂々たる城の建設に着手しました。ルネサンス様式を基調としながらも、バロック様式の要素も取り入れられたこの城は、1604年までに完成しました。その後も改築や増築が繰り返され、城はさらに規模を拡大していきます。城の四隅には八角形の塔が配置され、堅固な防御機能を備えていました。

大北方戦争中の1706年には、スウェーデンのカール12世率いる軍隊による略奪と破壊を受けました。その後、ラジヴィウ家は城の修復と拡張に尽力し、ドイツやイタリアから建築家を招聘して、バロック様式の華麗な装飾が施されました。アントニ・ザレスキによるバロック様式のスタッコ装飾は、城の黄色いファサードを美しく彩っています。16世紀の城門の再建や、兜で飾られた2階建ての守衛詰所の塔の建設などもこの時代に行われました。

キリスト聖体教会

ネスヴィジ城に隣接するキリスト聖体教会(Corpus Christi Church)は、1587年から1603年にかけて建設されました。イタリア人建築家ジャン・マリーア・ベルナルドーニによる設計で、ローマのイル・ジェズ教会をモデルに、バロック様式のファサードを持つドーム型天井のバシリカ式聖堂として建てられました。これは、東ヨーロッパにおける初期のバロック様式建築の代表例として高く評価されています。教会内には、ラジヴィウ家の72人の墓が樺製の柩に納められており、彼らの歴史を物語っています。バロック様式のフレスコ画や、1583年にヴェネツィア人彫刻家によって制作された聖十字架の祭壇などの貴重な美術品も数多く残されています。

衰退と復興

1770年代にはロシア軍の略奪を受け、ラジヴィウ家は城を追われました。多くの美術品が散逸し、リトアニアの古文書はサンクトペテルブルクに移されました。その後、城は徐々に荒廃していきましたが、1881年から1886年にかけて、ラジヴィウ家の当主アントニ・ヴィルヘルム・ラジヴィウとその妻マリー・ド・カステラーヌによって内装の復元が行われ、広大なイギリス式風景庭園も整備されました。この庭園は、現在でもヨーロッパ最大級の規模を誇ります。

1939年のソ連軍の侵攻後、城はサナトリウムとして使用されましたが、庭園は次第に荒廃していきました。1994年には国の歴史的・文化的保護区に指定され、2005年にはユネスコの世界遺産に登録されました。現在も修復作業は継続されていますが、一部の再建については批判の声も上がっています。2002年には火災による被害もありました。

世界遺産登録基準

ネスヴィジ城は、以下の世界遺産登録基準を満たして登録されています。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。

ネスヴィジ城は、ラジヴィウ家の歴史と文化、そしてヨーロッパのバロック建築史を理解する上で、極めて重要な役割を果たす貴重な遺産です。

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