ネッツエスアイ東洋

ネッツエスアイ東洋株式会社：通信とマネーハンドリングの技術集団とその終焉

ネッツエスアイ東洋株式会社は、かつてNECグループの一員として活躍した企業です。神奈川県川崎市に本社を置き、自動券売機や通信インフラ装置などの開発・販売を主な事業としていました。その歴史は古く、前身である東洋通信機株式会社は1891年創業。通信機器の製造販売からスタートし、長年に渡り日本の通信インフラ発展に貢献しました。

二つの事業柱：マネーハンドリングとネットワークシステム

同社の事業は大きく分けて2つありました。一つはマネーハンドリング事業です。自動券売機を始め、窓口発券機、カード自動販売機、自動入金機、さらには証明書自動交付機や施設予約端末など、多様な貨幣関連機器やシステムを開発・販売していました。これらは駅や商業施設、公共機関など、様々な場所で利用されていました。

もう一つの柱はネットワークシステム事業です。高度なネットワーク技術、光通信技術、センサ技術、ソフトウェア技術、そしてLSI設計技術を融合させ、通信インフラを支える装置を開発・販売していました。PLC（プログラマブルロジックコントローラ）、CWDM装置、TDM装置、クロック分配装置、FTTHノード、絶縁監視システム、標準時刻信号発生装置など、多様な製品群を提供することで、社会のデジタル化を支える役割を担っていました。

歴史：東洋通信機からネッツエスアイ東洋へ

1891年、吉村商会として創業した同社は、幾度かの合併を経て、1938年に東洋通信機株式会社となりました。その後、東京証券取引所への上場を果たし、相模事業所の建設、本社移転など、順調に成長を遂げました。2005年、東洋通信機株式会社の会社分割によって東洋ネットワークシステムズ株式会社が設立され、NECネッツエスアイ株式会社の完全子会社となりました。さらに2007年には社名をネッツエスアイ東洋株式会社に変更し、横浜市、そして再び川崎市へと本社を移転しています。しかし、2015年にはNECマグナスコミュニケーションズ株式会社に吸収合併され、その歴史に幕を閉じました。

全国に広がる営業拠点

ネッツエスアイ東洋株式会社は、全国各地に営業拠点を展開していました。札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡など主要都市に支店や営業所を構え、幅広い顧客への対応体制を整えていました。

2014年の着服事件

同社の歴史において、大きな影を落としたのが2014年に発覚した着服事件です。元経理部社員による約15億円規模の着服事件は、長年に渡り巧妙に隠蔽されており、小切手の二重振り出しや不正裏書き、銀行残高証明書の偽造など、組織的な不正行為が指摘されました。この事件は、同社の内部統制の不備を露呈させ、大きな社会的批判を浴びました。

関連会社

ネッツエスアイ東洋株式会社は、NECネッツエスアイ株式会社やトーヨーアルファネット株式会社など、複数の関連会社と連携して事業を展開していました。

まとめ

ネッツエスアイ東洋株式会社は、通信技術とマネーハンドリング技術を融合させた事業展開で、日本の社会インフラに貢献した企業でした。しかし、不正事件による経営への打撃と、吸収合併という結末を迎えることとなりました。その歴史は、企業の成長と衰退、そして内部統制の重要性を改めて考えさせるものです。

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