ネットスケープコミュニケーションズ

ネットスケープコミュニケーションズとは

ネットスケープコミュニケーションズ（Netscape Communications Corporation）は、1990年代のインターネット黎明期において、ウェブブラウザ「Netscape Navigator」を開発・提供したことで知られるアメリカの企業です。1994年にジム・クラークとマーク・アンドリーセンによってモザイク・コミュニケーションズとして設立され、後にネットスケープコミュニケーションズに社名を変更しました。同社は、ウェブ技術の発展に大きく貢献し、JavaScript、RDF/RSS、SSLといった今日のインターネットを支える基盤技術を生み出した企業でもあります。

1998年にAOLに買収され、その歴史に幕を閉じましたが、その影響は今もなお色濃く残っています。

主要製品

Netscape Navigator

ネットスケープの代名詞とも言えるのが、ウェブブラウザ「Netscape Navigator」です。当初は機能制限付きの無料版と、機能制限のない有料版の2種類を配布するという戦略を取りました。この戦略が功を奏し、株式公開時には市場が過熱するほどの人気を集め、World Wide Webの普及を加速させる原動力となりました。

しかし、マイクロソフトが「Internet Explorer」をWindowsに標準搭載し、無償で提供を開始すると、その勢力図は大きく変化します。ネットスケープは有料モデルに固執し続けたため、ユーザーは次第にInternet Explorerへと流れていきました。この一連のシェア争いは、第一次ブラウザ戦争として知られています。

ネットスケープはマイクロソフトを不公正な競争であると訴えましたが、後にAOLとマイクロソフトの和解に伴い、訴訟は取り下げられました。1998年に無料化に転じましたが、時すでに遅く、Netscape Navigatorは競争力を失ってしまいます。その後も新バージョンをリリースしましたが、欠陥が多く、Windowsとの相性や複雑な設定項目がユーザーに敬遠され、利用率は低迷しました。2011年時点では、Netscapeの利用率は0.1%未満にまで落ち込んでいます。

Netscape Communicator

Netscape Navigatorの後継としてリリースされたのが、Netscape Communicatorです。これは、ブラウザだけでなく、メールソフトやHTMLエディタなど、複数の機能を統合したスイート製品でした。

Directory Server

ネットスケープは、世界初の商用LDAPディレクトリサーバーである「Netscape Directory Server」も開発しました。この製品は、ミシガン大学のLDAPv1サーバslapdから派生しており、OpenLDAPとの共通点も多く見られます。現在は、サン・マイクロシステムズが権利を買い取り、Sun Java System Directory Serverとして提供されています。また、レッドハットもNetscapeが留保した権利を買い取り、389 Directory ServerおよびRed Hat Directory Serverとして提供しています。

SuiteSpot

ネットスケープは、企業向けのサーバ製品群「SuiteSpot」も提供していました。これには、Webアプリケーションサーバ、エンタープライズサーバ、コミュニケーションサーバ、コマースサーバ、FastTrackサーバなどが含まれていました。

その他の製品

上記以外にも、Netscape Information Management、Messaging & Collaboration、Administration & Security Infrastructure、SuiteSpot Hosting Editionなどの製品を提供していました。

その後のネットスケープ

ネットスケープの日本法人は2001年に解散しています。その後、Netscape 7（2002年）、Netscape 8（2005年）などのバージョンがリリースされましたが、バージョン8以降、英語版以外の公式版はリリースされていません。

ネットスケープ製品の多くは、親会社AOLが設立したMozilla Foundationに移行し、開発が続けられています。Mozilla Foundationは、Netscape Navigatorの精神を受け継ぎ、Mozilla Firefoxなどのオープンソースブラウザを開発しています。

ネットスケープの意義

ネットスケープは、その短い歴史の中で、ウェブブラウザという概念を広め、インターネットの普及に大きく貢献しました。Netscape Navigatorは、Webページの閲覧を誰でも簡単にできるようにし、一般の人々がインターネットに触れる機会を大きく広げました。また、JavaScriptなどの技術は、Webページに動的な表現をもたらし、今日のWebアプリケーションの基礎を築きました。

ネットスケープの盛衰は、技術革新と市場競争の激しさを象徴する出来事として、インターネット史に深く刻まれています。

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