ネリー・ルーセル

ネリー・ルーセル：急進的なフェミニストの生涯

ネリー・ルーセル（1878年1月5日 - 1922年12月18日）は、フランスのジャーナリスト、新マルサス主義フェミニスト、フリーメイソン会員、自由思想家、無政府主義者、社会主義者として多岐にわたる活動を行いました。彼女は、女性が社会的地位、婚姻状況、子供の有無にかかわらず、自己実現と幸福を追求する権利、そして身体的苦痛を拒否する権利を持つと主張し、当時のフェミニストの中でも特に急進的な存在でした。

生い立ちと目覚め

パリのブルジョワ家庭に生まれたルーセルは、伝統的な宗教教育を受けましたが、祖父の影響で読書や演劇を通じて独立心と探究心を養いました。15歳の時、両親から女性は学業を続けるべきではないと言われたことがきっかけで、女性に対する「不正」に気づき、これを「去勢」と表現しました。父の死後、母の再婚により家庭環境が悪化し、女優志望も義父に反対されたため、家を出て祖父のもとに身を寄せました。

人生を変えた出会い

1898年、20歳の時に彫刻家アンリ・ゴデと出会いました。パリ・コミューンに参加した父とユダヤ人の母を持つゴデは、熱心なドレフュス派・反教権主義者であり、フリーメイソン会員でもありました。ルーセルはゴデを深く尊敬し、フェミニストとしての使命を「聖職」と表現しました。ゴデは、ルーセルがフェミニズムの擁護者として批判された際に、彼女を支持し擁護しました。

フリーメイソンと人権連盟

家族の反対を押し切ってゴデと結婚したルーセルは、男女混成のフリーメイソン「スコットランド象徴グランド・ロッジ」に入会し、ルイーズ・ミシェルやマドレーヌ・ペルティエらと活動を共にしました。また、ドレフュス派として人権連盟にも加盟し、講演会で講師を務めるなど、積極的に社会活動に参加しました。

出産と苦悩

ルーセルは3人の子供を授かりましたが、出産経験は彼女のフェミニズムに大きな影響を与えました。身体的苦痛や出産への恐怖、自由や自立が制限されることへの恐れから、カトリシズムの概念や「女性の運命」に憤りを覚えました。次女の死も経験し、大きな悲しみを味わいました。

新マルサス主義フェミニズム

ポール・ロバンとの出会いもルーセルの思想に影響を与えました。ロバンは「母性の自由」を擁護する新マルサス主義の結社「人間再生同盟」を結成し、多産によって労働力を提供することを拒否すべきだと主張しました。ルーセルは、女性の経済的自立と社会制度改革の必要性を訴え、「母性の自由」を保障することこそが重要だと考えました。

母性の自由と経済的自立

ルーセルは、女性が望む時にのみ母になることができる「母性の自由」と、母親業に対する公正な報酬を主張しました。また、女性の経済的自立を保障するために、職業の自由な選択と男女同一賃金が不可欠であると考えました。彼女は、資本主義は女性の「最大の敵の一つ」ではあるものの「唯一の敵」ではなく、社会主義や無政府主義の革命家自身の中にある女性蔑視を克服する必要があると訴えました。

その他の活動と晩年

ルーセルは、「人間再生同盟」の機関誌やフェミニスト新聞などに寄稿し、女性友愛同盟や女性反戦連盟でも活躍しました。約250回の講演を行い、200本以上の記事を執筆しました。1922年12月18日、結核のため44歳の若さで亡くなりました。彼女の著作物は、後に娘によってマルグリット・デュラン図書館に寄贈されました。

ネリー・ルーセルの思想は、現代のフェミニズムにも通じる先駆的なものであり、彼女の活動は、女性の権利と自由を求める闘いにおいて重要な役割を果たしました。

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