ネレトヴァの戦い

ネレトヴァの戦い：負傷者のための戦い

ネレトヴァの戦いは、第二次世界大戦中の1943年初頭、枢軸国連合部隊によってユーゴスラビア全域で行われたパルチザン掃討作戦における重要な戦いの一つです。ドイツ軍では「白作戦」(Fall Weiß)と呼ばれ、一般には「第4次反パルチザン攻勢」として知られています。ユーゴスラビアでは「第4次敵攻勢」または「負傷者のための戦い」とも呼ばれました。

作戦の背景

ドイツ軍は、パルチザン活動の中央司令部と主な病院の破壊を企図し、枢軸側の戦力としてドイツ軍6個師団、イタリア軍3個師団に加え、クロアチア師団やチェトニック、ウスタシャなどの兵員を集結させました。総勢約15万人の枢軸側兵力に対し、パルチザン部隊は兵力で劣勢でした。

作戦は以下の３段階に分かれて実行されました。

白I: 1943年1月20日、ボスニア西部とクロアチア中部のパルチザン占領地域に対する攻撃。
白II: 2月25日からボスニアの西部および南西部で戦闘が行われ、パルチザンはネレトヴァ川の南西まで退却。
白III: 3月から北ヘルツェゴビナ地域に集中して行われましたが、包囲されたパルチザン部隊はモンテネグロ北部に脱出し、完遂されませんでした。

戦いの経過

戦いの終盤、パルチザンはネレトヴァ川を背にした谷間に追い詰められました。西岸にはドイツ軍が、東岸にはチェトニック部隊が展開し、唯一の橋が重要な拠点となっていました。パルチザン指揮官のヨシップ・ブロズ・チトーは、この状況を打開するために綿密な計略を立てました。

チトーは工兵に命じ、川にかかる唯一の橋を爆破させました。ドイツ軍は、パルチザンが西岸沿いに北へ最後の突撃を敢行するつもりだと判断し、部隊の配置転換を開始します。しかし、これはチトーの作戦であり、その隙に工兵部隊が橋を応急修理し、対岸のチェトニック部隊を排除することに成功しました。

ドイツ軍は直ちに事態を把握しましたが、移動命令のために迅速な攻撃準備ができず、パルチザンはドイツ空軍の激しい爆撃の中、川を渡り脱出しました。応急修理された橋は、山間部の複雑な地形も幸いして破壊を免れ、脱出完了後に完全に破壊され、追撃を防ぎました。この枢軸側の戦略的失敗は、チトーによって大々的に喧伝されました。

パルチザンは、負傷者を見捨てることなく、共に脱出することを実現しました。別の文献によると、パルチザンは当初サラエボ南西のコニーツでネレトヴァ川を渡る予定でしたが、ドイツ軍に占拠されたため、ヤブラニツァで爆破された橋に板を並べて渡河しました。渡河後、プレニ山に展開していたチェトニック部隊を奇襲し、モンテネグロへ向かいました。渡河地点のヤブラニツァには、ネレトヴァの戦い記念館が設立されています。

戦いの結果

3月末までに、枢軸軍は約8,000名のパルチザンを殺害し、2,000名を捕虜にしました。しかし、パルチザン組織は司令部と病院を守り抜き、活動を継続することができました。ボスニア・ヘルツェゴビナ東部に到達したときには、敵はチェトニックのみとなり、ドリナ川西岸地域でほぼ完全に無力化されました。

枢軸軍は、この後「黒作戦」（第5次反パルチザン攻勢）を実行しました。

枢軸側部隊

ドイツ: 第7SS義勇山岳師団「プリンツ・オイゲン」、第369歩兵師団、第714歩兵師団、第717歩兵師団、第187予備師団から1個連隊
イタリア: 第12歩兵師団「サッサリ」、第13歩兵師団「国王」、第57歩兵師団「ロンバルディア」
クロアチア独立国: 第2クロアチア本国防衛山岳旅団、第3クロアチア本国防衛山岳旅団
* チェトニック: 約20,000人（名目上はイタリア反共志願軍団）

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