ノコンギク

ノコンギク（野紺菊）

ノコンギク（学名: Aster microcephalus var. ovatus）は、キク科の多年草で、野菊の一種です。ヨメナと非常によく似ていますが、種内変異が大きく、外見の異なる個体も存在します。別名としてホソバコンギクとも呼ばれます。

分布と生育環境

ノコンギクは、日本の本州、四国、九州に分布しています。生育範囲は広く、人里近くから自然環境まで、様々な場所で見られます。道端や日当たりの良い野原、原野などに群生していることが多いです。

また、伊藤左千夫の小説『野菊の墓』に登場する野菊は、このノコンギクではないかという説があります。

特徴

ノコンギクは、地下茎を長く伸ばし、そこから多数の茎を出すことで群落を形成します。茎は直立して高さ30～60cmに達し、よく枝分かれします。根元から出る葉（根出葉）は卵状長楕円形で、茎につく葉（茎葉）は卵状楕円形から卵形で、3本の脈があります。葉の縁には粗い鋸歯があり、両面に短い毛が生えています。根出葉は開花時期には枯れてなくなります。

花期は8月から11月頃で、茎の先に散房状の花序をつけます。頭花は直径約2.5cmで、周囲の舌状花は紫を帯びた白から薄紫色、中心の管状花は黄色です。痩果は長さ1.5～3mmで、先端には4～6mmの冠毛が多数あります。

利用

ノコンギクは、古くから観賞用として栽培されてきました。特に、コンギク（cv. Hortensis）という品種は、より鮮やかな色をしています。また、コマチギクは背が低く、花数が多い品種です。

若芽は、ヨメナと同様にシュンギクに似た香りがあり、食用にできます。採取時期は4～5月頃で、暖地では3月頃が適しています。若芽は、茹でておひたしや和え物、炒め物などにしたり、天ぷらにもできます。花やつぼみも天ぷらにして食べられます。

近似種

最もよく似ているのはヨメナです。葉の形や花の色まで非常によく似ています。ヨメナは野菊の代表とされることも多く、辞書などでは野菊の別称として扱われることもありますが、実際には両者は分布も重なり、同じような環境で見られるため、混同されることが多いようです。

ノコンギクとヨメナの最も明確な違いは、ヨメナの種子（実際は果実）には冠毛がない点です。また、葉の両面に毛があることも、ほぼ無毛のヨメナとは異なりますが、目立ちにくい場合もあります。詳細な見分け方については、ヨメナの項目も参照してください。

ノコンギクには、他にも多くの亜種や変種が存在します。以下に主なものを記します。

分類

伝統的に、ノコンギクには Aster ageratoides subsp. ovatus という学名が用いられてきました。しかし、近年では分類体系が見直され、YListなどの新しい情報源では、学名が大きく変更されています。

原名亜種であるチョウセンノコンギク (A. ageratoides subsp. ageratoides) は、朝鮮半島から中国北部にかけて分布します。ノコンギクは非常に多くの変異を持ち、日本国内でも複数の亜種や変種が知られています。これらの変異の中には、ノコンギクに似たものもあれば、印象が大きく異なるものもあります。特にヤマシロギクやシロヨメナはその傾向が強いですが、地域によっては中間的な個体も出現し、判断が難しい場合があります。

以下は、ノコンギクの変種として扱われることのあるものです。

エゾノコンギク (var. yezoensis)
ホソバコンギク (var. angustifolius)
タニガワコンギク (var. ripensis)
ヤクシマノギク
センボンギク (var. microcephalus)
ヤマシロギク
シロヨメナ
シコクシロギク (var. yoshinaganus)
アキバギク
ハマコンギク (var. littoricola)
チョクザキヨメナ (var. tubulosus)

分類体系には異論もあり、これらの変種を別種とする説もあります。例えば、『朝日百科 植物の世界』では、ノコンギクの学名を A. ovatus とし、タニガワコンギクをその変種とし、その他の変種を独立種としています。

しかし、YListでは、イナカギクやシロヨメナとは異なる系統に属すると判断し、学名を Aster microcephalus var. ovatus* としています。この学名は、センボンギクの種小名を元にしています。

ノコンギクは、分類が複雑で、今後の研究によってさらに変化する可能性のある植物です。

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