ノルトリプチリン

ノルトリプチリン (Nortriptyline)

ノルトリプチリンは、うつ病の治療に用いられる三環系抗うつ薬の一種です。この薬は、神経伝達物質の一つであるノルアドレナリンやセロトニンの再取り込みを阻害する作用を持ちます。このため、シナプス間隙におけるノルアドレナリンの濃度が上昇し、抗うつ効果を示します。

特徴

ノルトリプチリンは、第1世代の抗うつ薬であり、特にノルアドレナリンに対する再取り込み阻害作用が強いのが特徴です。また、水には溶けない無臭の有機化合物でもあります。市販名は「ノリトレン」で、大日本住友製薬が製造・販売しています。

薬効薬理

ノルトリプチリンの主な作用は、ノルアドレナリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンやドパミンの再取り込みにも影響を与えますが、特にノルアドレナリンに対する作用が顕著です。研究によると、ラットの脳シナプトゾームを用いた実験では、ノルアドレナリンの再取り込みを強力に阻害し、その結果として抗うつ作用が示されています。

さらに、マウスモデルを用いた実験では、レセルピンによる体温低下作用に対して抑制的な作用を示すことも確認されています。

薬物動態

ノルトリプチリンの血中濃度が最高に達するまでの時間は約4.8時間で、半減期は26.7時間とされています。この薬の主な代謝産物には、10-hydroxynortriptyline、desmethylnortriptyline、および10-hydroxydesmethylnortriptylineが含まれます。主に肝臓で代謝され、尿中に約60％が排泄されます。代謝には、シトクロムP450分子種のCYP2D6が関与しています。

臨床成績

臨床試験において、508名の患者を対象にノルトリプチリンの有効性が評価されました。この試験では、うつ病やうつ状態に対する有効率が52％、およびやや有効率が73％と高い結果が示されています。これは、精神科領域におけるうつ病治療において、ノルトリプチリンが有用な治療選択肢であることを示唆しています。

副作用

使用に際しては、倦怠感、脱力感、集中力の低下、眠気、頭痛、めまいといった副作用が報告されています。これらの副作用は、患者によって異なる可能性があるため、療養中は注意が必要です。特に運転や機械操作を行う際には、肉体的な影響を考慮することが重要です。

まとめ

ノルトリプチリンは、うつ病治療において選択肢の一つとして広く用いられています。その高い有効性と相対的にわかりやすい作用機序から、多くの医療現場で重宝される薬剤ですが、使用に伴う副作用にも留意しながら、適切な管理が求められます。

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