ノルブリンカ

ノルブリンカ（チベット語：ནོར་བུ་གླིང་ཀ་）は、中国チベット自治区の首府ラサに位置する、かつてのダライ・ラマの夏の離宮とその広大な庭園です。「宝の庭」を意味するこの地は、1755年にダライ・ラマ7世によって建設が開始され、1950年代に中華人民共和国に接収されるまで、歴代ダライ・ラマが夏を過ごす場所として使用されました。

現在は公園として一般に開放されており、ラサ市民の憩いの場として親しまれています。ポタラ宮から西へ約3キロメートルに位置し、総面積は約36万平方メートルにも及びます。

園内には、歴代のダライ・ラマがそれぞれ趣向を凝らした建物を建造しました。特に有名なのは、ダライ・ラマ14世が1954年に建てた「タクテン・ポタン」です。二階建ての豪華な建物で、当時の家具、ラジオ、レコードプレーヤーなどがそのまま保存されており、当時の生活を垣間見ることができます。その他にも、ダライ・ラマ13世の離宮である「チェンセル・ポタン」、湖の中に佇む「ツォキル・ポタン」、ダライ・ラマ8世の離宮「ケルサン・ポタン」など、歴史的な建造物が点在しています。また、13世の図書館、博物館、動物園なども存在し、見どころ満載です。

2001年には、その歴史的、文化的価値が認められ、「ラサのポタラ宮の歴史的遺跡群」の一部としてユネスコ世界遺産に登録されました。

毎年8月には、チベット仏教最大の祭りの一つである「ショトゥン祭（ヨーグルト祭、夏安居明け祭り）」が開催されます。この時期には、チベット各地から集まった劇団によるチベタン・オペラ（アチェ・ラモ）がノルブリンカで上演され、多くの人々で賑わいます。特に、ピクニックを楽しむチベットの人々で賑わい、活気に満ち溢れます。

また、ノルブリンカは歴史の舞台ともなりました。1959年3月に人民解放軍がラサに進駐した際、ダライ・ラマ14世が密かに脱出し難を逃れましたが、その際に脱出の舞台となった王宮が、まさにこのノルブリンカなのです。

かつてのダライ・ラマの夏の離宮であり、現在は市民の憩いの場として、そしてチベット文化を伝える重要な場所として、ノルブリンカは今もなおその輝きを放っています。

関連情報

ラサ市
ポタラ宮
トゥルナン寺（ジョカン・大昭寺）
ダライ・ラマ
ラサのポタラ宮の歴史的遺跡群
世界遺産

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