ノースロップ・グラマン・ガーディアン

ノースロップ・グラマン・ガーディアン：民間航空機を守る防衛システム

ノースロップ・グラマン社が開発したガーディアンシステムは、携帯式地対空ミサイル（MANPADS）から民間航空機を守るためのミサイル防衛システムです。指向性赤外線妨害装置（DIRCM）技術を用いたパッシブシステムで、大型航空機赤外線対抗システム（LAIRCM）とも呼ばれます。本システムは、MANPADSの脅威増加という背景から開発されました。

MANPADS脅威の拡大と開発の背景

MANPADSは、安価で入手容易なことからテロ組織など非国家主体による航空機攻撃に利用される危険性が高まりました。ルワンダ大統領専用機撃墜事件（1994年）、アルキア航空機攻撃事件（2002年）、DHL貨物便撃墜事件（2003年）、トランサヴィアエクスポート航空墜落事故（2007年）など、MANPADSを用いた民間航空機への攻撃は増加の一途を辿り、アメリカ国務省の報告によると、1970年以降40機以上の民間航空機が攻撃され、400人以上の犠牲者が出ています。こうした事態を受け、アメリカ合衆国議会は2003年、民間航空機ミサイル防衛法案を可決し、国土安全保障省（DHS）によるミサイル防衛システムの研究開発を承認しました。

ガーディアンシステム：技術と仕組み

ガーディアンシステムは、既存の軍事用赤外線対策技術であるAAQ-24 ネメシスをベースに開発されました。ボーイング747、マクドネル・ダグラス DC-10/MD-10、マクドネル・ダグラス MD-11といった機種に対応しており、FAAの認証も取得しています。

システムは、センサーアレイで接近するミサイルを検知し、赤外線追跡カメラで追尾します。システムコンピューターは脅威を分析し、可視赤外線レーザービームをミサイルに向けて照射することで、ミサイルの誘導システムを妨害します。この「検知・追尾・妨害」のプロセスは2～3秒間継続され、妨害成功後には乗員と航空交通管制機関に自動的に通知されます。

システムは重量250kg、高さ460mmの外部ポッドに収められており、航空機の胴体下部に装着されます。ポッドは取り外し可能で、1時間以内に別の航空機に移設することも可能です。システムのコストは1機あたり約100万ドルと推定されています。

開発と試験

ガーディアンシステムは、DHSの「プロジェクト・クロエ」の下で開発が進められました。2005年にはDHSフェーズIIのシステム設計承認を受け、フェデックス所有のMD-11やB747を用いた飛行試験を実施。ミサイル発射と追尾をシミュレートする電子機器を用いて、離陸・着陸時の試験でも100%の成功率を達成しました。空軍州兵もKC-135を用いた試験を実施しています。

展開と訴訟問題

プログラムの第IIIフェーズでは、商業運航への展開が行われました。フェデックスが2006年9月にガーディアン搭載機を初導入し、その後も複数の航空会社に導入されました。しかし、ノースロップ・グラマン社は、2007～2008年に政府との契約を巡り、コストの不正計上や虚偽報告、試験データ隠蔽などの告発を受け、訴訟に発展し契約は解消されました。同社はB-2爆撃機開発でも不正請求問題で訴訟を起こされ、和解金6200万ドルを支払っています。

まとめ

ガーディアンシステムは、MANPADSという深刻な脅威に対処するための重要な技術的進歩を示しました。しかし、開発段階での不正問題や高額なコストは、システム導入の課題を示唆しています。民間航空機の安全確保という重要な目的のために、技術開発と倫理的な企業行動の両面からの更なる努力が求められます。今後、より安全で効果的な、そしてコストパフォーマンスに優れた民間航空機防衛システムの開発が期待されます。

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