DHL貨物便撃墜事件とは？意味をやさしく解説

DHL貨物便撃墜事件の概要

2003年 11月22日、イラクのバグダード国際空港を離陸直後のDHL貨物便が、携帯式地対空ミサイルによる攻撃を受けました。この事件は、民間航空機がテロリストの攻撃に晒された事例として、世界に衝撃を与えました。

事件当時の状況

使用機材: エアバスA300B4-203F
機体記号: OO-DLL
運航会社: DHL
予定経路: バグダード国際空港発、バーレーン国際空港行
乗員:
機長: 38歳（ベルギー出身）
副操縦士: 29歳（ベルギー出身）
航空機関士: 54歳（スコットランド出身）

機長は豊富なA300飛行経験を持ち、副操縦士、航空機関士も十分な経験を積んでいました。積荷は主に駐留兵士の郵便物でした。

事件発生

DHL機は、離陸直後に左翼にミサイルの直撃を受けました。主翼は炎上し、油圧制御系統は全損。燃料タンクも損傷し、燃料が漏れ出す危機的な状況でした。通常であれば墜落は免れない状況でしたが、パイロット達は機体をバグダードに引き返すことを決断。

乗員たちの決死の操縦

油圧系統を失った機体は、エンジンの推力操作のみで制御を余儀なくされました。機長は、過去の類似事故（JAL123便やUA232便）の事例を参考に、エンジンの推力調整によって垂直方向、速度、高度を制御。左右の推力を非対称にすることで水平方向の制御を試みました。また、航空機関士は、通常油圧で行う着陸脚の展開を、重力落下によって実行しました。これにより機体は減速し、安定を取り戻すことができました。

緊急着陸の決行

乗員たちは約10分間の懸命な操縦で、機体の制御を取り戻し、バグダード国際空港への着陸を試みました。視界は良好であったものの、左翼の損傷と燃料漏れは深刻で、正確なエンジン制御が不可欠でした。着陸直前には、乱気流によって機体がバランスを崩しましたが、推力補正によってロールを制御し、滑走路に着地しました。機体は滑走路を逸脱し、1,000メートルオーバーランしましたが、奇跡的に乗員は全員生還しました。

事件後の影響

乗員たちは、その勇敢な行動と卓越した操縦技術が評価され、数々の賞を受賞しました。この事件は、航空業界における安全対策の重要性を改めて認識させるものとなりました。

ヒュー・ゴードン＝バージ記念賞
航空安全財団プロフェッショナリズム賞

また、機長はエアバス社のテストパイロットとともに、「飛行制御不可能なA300を成功裏に着陸させること」と題した講演を行いました。

機体のその後

攻撃を受けたDHL機は、深刻な損傷を受け、二度と飛行することはありませんでした。現在もバグダードに置かれています。

ジャーナリストの行動

事件当時、DHL機を攻撃した民兵部隊に同行していたフランス人ジャーナリストは、その行為を制止しなかったとして批判を受けましたが、「銃を持ったテロリストに囲まれては何もできなかった」とコメントしています。

メディアでの報道

この事件は、多くのドキュメンタリー番組や報道番組で取り上げられています。

『メーデー!:航空機事故の真実と真相』(ナショナルジオグラフィックチャンネル)
『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系列)
『ブラマヨ衝撃ファイル世界のコワ〜イ女たち』(TBS系列)
『水トク! 世界衝撃映像100連発』(TBS系列)

DHL貨物便撃墜事件