ノー・セキュリティ

ローリング・ストーンズのライブアルバム『ノー・セキュリティ』(No Security)は、1998年にリリースされ、世界中のファンを魅了しました。このアルバムは、1997年から1998年にかけて行われた大規模なワールドツアー「ブリッジズ・トゥ・バビロン」ツアーの模様を収めたもので、ツアーの熱気とストーンズの圧倒的なパフォーマンスを余すことなく伝えています。

アルバムには、「ユー・ガット・ミー・ロッキング」「ギミー・シェルター」「メモリー・モーテル」といったストーンズの代表曲に加え、「コリーナ」ではタジ・マハルが、「セイント・オブ・ミー」ではデイヴ・マシューズがゲスト参加するなど、豪華な顔ぶれが参加しています。また、日本盤にはボーナストラックとして「恋をしようよ」が収録されており、日本独自の特典としてファンを喜ばせました。収録されている楽曲は、ストーンズのキャリア全体を網羅するような選曲となっており、初期のブルージーなナンバーから、後期に発表されたロックナンバーまで、幅広い音楽性を堪能できます。演奏時間や参加ミュージシャンなどの詳細情報もアルバムに記載されているため、より深く楽曲を理解することができます。

『ノー・セキュリティ』のリリースは、ストーンズのツアー活動に大きな影響を与えました。当初、1997～1998年のブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアーは、キース・リチャーズの怪我やイギリスでの新たな課税システム導入などの問題により、ヨーロッパ公演が約1年間延期されました。この延期期間中、アルバム『ノー・セキュリティ』がリリースされ、そのタイトルを冠した「ノー・セキュリティーツアー1999」が開催されました。

このツアーは、それまでのストーンズのスタジアムツアーとは異なり、すべてアリーナ公演で行われました。これは、90年代の大半をスタジアム公演で過ごしてきたストーンズにとって画期的な試みであり、より親密な空間で観客と一体となるパフォーマンスを追求した結果と言えるでしょう。さらに、このツアーでは演目や舞台セットもブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアーから一新され、オープニングナンバーも約30年ぶりに「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」に変更されました。この変更は後のツアーにも影響を与え、『リックス・ツアー』や『ア・ビガー・バン・ツアー』でも「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」がオープニングとして採用されるなど、ストーンズのライブにおける定番となりました。

ノー・セキュリティーツアー1999は、1999年1月25日のアメリカ・カリフォルニア州オークランド・アリーナ公演を皮切りに、同年4月まで北米で34公演が行われました。一方、延期されていたヨーロッパ公演は、その後ブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアーとして再開されましたが、この際に舞台セットは元の状態に戻されました。しかしながら、演目についてはノー・セキュリティーツアーの影響を受け継いでおり、両ツアーの融合した内容となりました。

ノー・セキュリティーツアー以降、ストーンズはアリーナ公演を積極的に行うようになり、ワールドツアーにおけるアリーナ公演の数は増加傾向となりました。このアルバムとツアーは、ストーンズの音楽性とパフォーマンス、そしてビジネス戦略における転換期を示す重要な出来事として、ロック史に刻まれています。アルバム『ノー・セキュリティ』は、単なるライブアルバムではなく、ストーンズの歴史を語る上で欠かせない1枚と言えるでしょう。

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