ギミー・シェルター

ギミー・シェルター：ローリング・ストーンズの不朽の名曲

1969年発表のローリング・ストーンズのアルバム『レット・イット・ブリード』に収録された「ギミー・シェルター」。ミック・ジャガーとキース・リチャーズによって作詞作曲されたこの曲は、2021年のローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」で13位にランクインするなど、彼らの代表曲として高い評価を得ています。

ベトナム戦争の影とサザンロックの融合

『レット・イット・ブリード』のオープニングを飾る「ギミー・シェルター」は、ベトナム戦争の暗い影を反映した黙示録的な歌詞と、ストーンズが後に深く傾倒することになるサザンロックの要素が見事に融合した楽曲です。ジャガー自身も、この曲とアルバム全体がベトナム戦争の影響を受けていると語っています。実際、楽曲の制作にはキース・リチャーズが大きく貢献しており、実質的な作詞作曲はリチャーズが行ったと言えるでしょう。

1969年5月から6月にかけてロンドンのオリンピック・スタジオでレコーディングが行われ、同年10月にはハリウッドのワーナー・ブラザース・スタジオでオーバーダブが施されました。ギター演奏はすべてリチャーズが担当し、ブライアン・ジョーンズやミック・テイラーは参加していません。特徴的なのは、ジャガーと共にリードボーカルを務めるメリー・クレイトンというアメリカのソウルシンガーの存在です。彼女の力強い歌声は楽曲に深みを与え、1970年にはクレイトン自身のカバーバージョンが全米チャート73位を記録しました。

オルタモントの悲劇と映画との関わり

この曲は、1969年のストーンズの北米ツアー、そしてその最終日に行われたオルタモント・フリーコンサートで起きた悲劇（オルタモントの悲劇）を題材にしたドキュメンタリー映画『ギミー・シェルター』のタイトルにもなっています。映画のエンドクレジットでは、コンサートのライブバージョンが使用されています。イギリスやアメリカではシングルカットされませんでしたが、日本では映画公開に合わせて1971年にシングルカットされました。

ライブパフォーマンスとレコーディングメンバー

1969年の北米ツアーから2016年まで、ストーンズのほとんどのツアーで演奏され続けてきました。近年では、サポートメンバーであるリサ・フィッシャーとのデュエットで披露されることが多いです。『ノー・セキュリティ』（1998年）、『ライヴ・リックス』（2004年）といった公式ライブ盤にも収録されています。さらに、1993年のチャリティアルバム『Gimme Shelter』のカセット版には、1989年ツアーのライブテイクが収録されています。

レコーディングメンバーは以下の通りです。

ミック・ジャガー：リードボーカル、ハーモニカ
キース・リチャーズ：エレキギター、バッキングボーカル
ビル・ワイマン：ベース
チャーリー・ワッツ：ドラムス
メリー・クレイトン：リードボーカル
ニッキー・ホプキンス：ピアノ
* ジミー・ミラー：パーカッション

多数のカバーとチャリティアルバム

「ギミー・シェルター」は、多くのアーティストによってカバーされています。グランド・ファンク・レイルロード、シスターズ・オブ・マーシー、ザ・タイガース、パティ・スミス、パドル・オブ・マッドなど、様々なアーティストがそれぞれの解釈でこの曲を演奏しています。

特に注目すべきは、1993年にイギリスのレーベル「フード・レコーズ」が企画したチャリティアルバムです。ホームレスの子供たちを救済する目的で制作されたこのアルバムには、ヴォイス・オブ・ビーハイヴ、ヘヴン17、ニューモデル・アーミーなど9組のアーティストによる「ギミー・シェルター」のカバーバージョンが収録されています。

このように、「ギミー・シェルター」は、ベトナム戦争という時代背景、サザンロックという音楽的要素、そしてオルタモントの悲劇という歴史的事件など、様々な要素が絡み合った、ローリング・ストーンズの代表曲であり、音楽史に大きな足跡を残した名曲と言えるでしょう。

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