ハイデラバード (パキスタン)

ハイデラバードの歴史と文化

ハイデラバードは、パキスタンのシンド州に位置する都市で、かつてはシンド州の州都でした。香水の都として知られ、「街の街路が香水で毎日洗い清められた」という伝承から、パキスタン建国以前には「インドのパリ」とも呼ばれていました。この都市は、シンド語文学運動の中心地であり、多くの詩人の生誕地でもあります。

古代からイスラム征服まで

ハイデラバードの歴史は、紀元前2600年から紀元前1800年のインダス文明時代に遡ります。この地域は当時、農業地域と森林で覆われていました。紀元前1500年から紀元前500年のヴェーダ時代には、インド・アーリア人がこの地域に侵入し、定住しました。ハイデラバードは、不毛の丘によって洪水から守られた小さな漁村「ネルーン・コトゥ」として知られていました。この村は交易で繁栄しましたが、武器が少なかったため、外敵に狙われやすい状況にありました。

636年には、チャチュ・ナーマによるとブラフマナバードはアフガム・ロハナが支配していました。

イスラムによる支配

711年、ムハンマド・ビン・カシムによって町が征服され、イスラム勢力による支配が始まりました。その後、アラブ人の支配を経て、イスラム教に改宗したソムルー族が支配権を引き継ぎました。997年には、ガズナ朝のサブク・ティギーン王が、息子のマフムード王に王位を譲り、1005年にはマフムード王がシンド州を征服しました。1206年には、デリー・スルターン朝がこの地域を征服し、スーフィズムの伝道師がイスラム教を広めました。1351年からは、サンマ朝が支配し、ソムルー族の法律が引き継がれました。1524年にはアルグン朝、1554年にはムガル帝国が支配しましたが、17世紀後半にはムガル帝国の支配力が弱まりました。

1701年、ヤー・ムハンマド・ハーン・カルホラは実質的なシンド州の支配者となりました。

カルホラ朝とタルプル王国

1757年頃、インダス川の洪水により川の流れが変化し、首都クダバードが何度も洪水に見舞われたため、ミアン・グラム・シャー・カルホラは新首都を建設することを決めました。1768年、古都ネルーン・コトゥの上にパッコ・チッロ砦を中心に新首都ハイデラバードが建設されました。この都市の名前は、ムハンマドの義理の息子のハイダルに由来します。1789年、タルプル王国のミー・ファテー・アリ・ハーン・タルプルがカルホラ王国からハイデラバードを奪い、1792年には正式に首都としました。

イギリス植民地時代

1843年、イギリスとのミアニの戦いに敗れ、タルプル王国はイギリスに降伏し、シンド州全体がイギリスの支配下に入りました。州都はカラチに移され、ハイデラバードは1853年に市として設置されました。1857年のインド大反乱では、ハイデラバードも影響を受けました。1886年には北西鉄道が開通し、ラホールやカブールと結ばれました。19世紀末には、人口が急速に増加し、インフラ整備が進められました。

パキスタン独立

1947年、パキスタンが独立すると、ハイデラバードではヒンドゥー教徒やシク教徒がインドに移住し、逆にインドからムスリムが移住しました。この人口変動は、地域社会に大きな影響を与え、ムハジルとシンド人との間で多くの暴力事件が起きました。1953年には自治体になりましたが、1955年には州都が再びカラチに移りました。1980年代には、民族間の対立が激化し、社会が分断されました。

現在、ハイデラバードは文化と伝統が豊かな都市であり、世界最大の腕輪（バングル）生産地としても有名です。シンド州の都市部と地方を結ぶ交通の要所としての役割も担っています。2015年の人口は約343万人です。