ハイドンの協奏曲一覧

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン（1732-1809）は、交響曲や弦楽四重奏曲の分野で輝かしい業績を残しましたが、協奏曲もまた彼の創作活動において重要な位置を占めています。

ハイドンの作品を整理したホーボーケン番号（Hob.）では、協奏曲の多くが第7群（Hob. VII）に分類されていますが、鍵盤楽器のための協奏曲は第18群（Hob. XVIII）として独立しています。彼の協奏曲作品には、作曲者自身の真作かどうかの判断が難しい作品や、楽譜が失われてしまった作品も少なくなく、その正確な全体像を把握することは現代でも困難です。

ここでは、現在知られているハイドンの主要な協奏曲について、楽器別に概説します。

ヴァイオリン協奏曲 (Hob. VIIa)

ハイドンは4曲のヴァイオリン協奏曲を作曲したとされています。これら以外にもヴァイオリン協奏曲とされる作品が5曲ほど確認されていますが、これらはハイドンの真作ではないと考えられています。

チェロ協奏曲 (Hob. VIIb)

チェロ協奏曲では、第1番ハ長調と第2番ニ長調が広く知られています。他に伝えられる第3番は楽譜が紛失しており、演奏不可能です。また、第4番と第5番とされる作品は、現在ではハイドンの作品ではないと見なされています。

コントラバス協奏曲 (Hob. VIIc)

ハイドンはコントラバス協奏曲を1曲作曲した記録がありますが、この作品も楽譜が紛失しています。

ホルン協奏曲 (Hob. VIId)

ホルンのための協奏曲は4曲が作曲されたとされますが、うち第2番についてはハイドンの真作であるか疑問視されています。

トランペット協奏曲 (Hob. VIIe)

トランペット協奏曲変ホ長調は、ハイドンの作品の中でも最も有名で、今日でもよく演奏される傑作です。

フルート協奏曲 (Hob. VIIf)

ハイドンが作曲したフルート協奏曲は2曲のみが現存しています。

オーボエ協奏曲 (Hob. VIIg)

オーボエ協奏曲も1曲のみが知られています。この作品は、旧東ドイツのツィッタウに保管されていたパート譜によって伝えられていますが、そのパート譜には、元々の作曲者名の上に異なるインクで「Haydn」と加筆され、さらに疑問符が付されていたという特異な経緯があります。このことから、作品の真偽については研究者の間で議論が続いています。

2つのリラのための協奏曲 (Hob. VIIh)

ハイドンは、リラ・オルガニザータという特殊な楽器のために複数の協奏曲を作曲しました。この楽器はナポリ王フェルディナンド4世が愛好しており、ハイドンは王の依頼を受けてこれらの作品を手がけました。特に知られているのは、ハイドンの有名な交響曲第100番「軍隊」の第2楽章に転用されたリラ協奏曲第3番です。
リラ・オルガニザータは現代では非常に珍しい楽器であるため、これらの協奏曲が原曲の編成で演奏される機会は限られます。しかし、近年ではナクソスなどのレーベルから録音が出版されており、また実際にリラ・オルガニザータを用いた貴重な録音も存在します。これらの録音を通じて、珍しい楽器のために書かれたハイドンの音楽に触れることができます。

鍵盤楽器のための協奏曲 (Hob. XVIII)

ホーボーケン番号で第18群に分類される鍵盤楽器協奏曲は、ハイドンの重要な作品群です。著名な音楽事典である『ニューグローヴ世界音楽大事典』第2版では、この群に属する作品のうち、XVIII:1、2、3、4、6、11の合計6曲がハイドンの真作として認められています。

これらの作品には、作曲された時期によって使用が想定される鍵盤楽器が異なります。XVIII:1、2、6番は初期の作品で、主にオルガンのために書かれたと考えられています。特に第1番は約1756年作曲とされ、現存するハイドンの大規模な器楽曲としては最も古い部類に入ります。第6番はオルガン（またはチェンバロ）とヴァイオリンのための二重協奏曲です。
1770年代のXVIII:3番と4番はチェンバロのために、そして1783-1784年頃のXVIII:11番ニ長調はチェンバロまたはピアノのために書かれました。この第11番は、ハイドンの鍵盤楽器協奏曲の中で最も有名で、広く演奏されています。

また、ホーボーケン番号第14群（Hob. XIV）に分類される鍵盤楽器つきのディヴェルティメントの中にも、初期の協奏曲と見なせる小規模な作品が存在しており、ハイドンの鍵盤楽器とオーケストラのための作品の多様性を示しています。

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