ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント

『ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント（How to Become Clairvoyant）』は、カナダ出身の著名なロックミュージシャン、ロビー・ロバートソンが2011年にリリースした通算5作目のソロ・スタジオアルバムです。前作から13年ぶりとなる本作は、日本で世界に先駆けて発売されました。

背景と制作

このアルバムの制作における大きな特徴の一つは、ギタリストとして不朽の地位を確立しているエリック・クラプトンとの密接な共同作業です。本作には、クラプトンとの共作による楽曲が3曲収録されています。ロバートソンによれば、二人は当初、特にアルバム制作を意図していたわけではなく、単に音楽を共に作る過程を楽しんでいたといいます。しかし、数年後に偶然その時の録音を耳にしたロバートソンは、「思っていた以上に深い領域に到達していた」と感じ、これを機にロンドンでクラプトンと共に楽曲を完成させる運びとなりました。クラプトンは共作者としてだけでなく、演奏家としても本作に大きく貢献しており、全12曲のうち7曲でギターやスライドギター、ハーモニー・ボーカルなどを担当しています。

また、本作にはクラプトン以外にも注目のゲストミュージシャンが参加しています。「マダムX」という楽曲では、クラプトンに加え、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがアディショナル・テクスチャを提供しています。ロバートソンはこの曲について、「本当に映画のような雰囲気を持った曲だ」と語り、トレント・レズナーの貢献が「美しく、忘れられないもの」であったと称賛しています。

さらに、「アクスマン」にはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリストとして知られるトム・モレロがゲスト参加しています。この楽曲の歌詞は特筆すべき内容を含んでおり、デュアン・オールマン、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジミ・ヘンドリックス、ロバート・ジョンソン、T-ボーン・ウォーカー、リンク・レイ、ジャンゴ・ラインハルト、エルモア・ジェームス、アルバート・キング、フレディ・キング、B.B.キングといった、ブルースやロック、ジャズなど様々なジャンルにおける伝説的なギタリストたちの名前が多数言及されています。

反響と評価

本作は商業的にも批評的にも成功を収めました。アメリカでは、Billboard 200チャートで13位にランクインし、ロビー・ロバートソンのソロキャリアにおいて、これが初の全米トップ20入りという快挙となりました。さらに、Billboard誌のインディペンデント・アルバム・チャートおよびロック・アルバム・チャートでは5位、デジタル・アルバム・チャートでは12位を記録するなど、各カテゴリで好成績を収めています。

イギリスにおいても、2011年4月23日付の全英アルバムチャートで56位にランクインしました。これは、1991年にリリースされたアルバム『ストーリーヴィル』以来、実に20年ぶりとなる全英チャートへの登場となりました。

評論からの評価も高く、音楽誌『ローリング・ストーン』が選出した「2011年のベスト・アルバム50」では、見事10位にランクインするなど、その質の高さを広く認められました。

収録曲

全12曲に加え、日本盤にはボーナス・トラックが追加されています。特記なき楽曲はロビー・ロバートソンの単独作です。

1. ストレイト・ダウン・ザ・ライン "Straight Down the Line"
2. ホェン・ザ・ナイト・ウォズ・ヤング "When the Night Was Young"
3. ヒー・ドント・リヴ・ヒア・ノー・モア "He Don't Live Here No More"
4. ザ・ライト・ミステイク "The Right Mistake"
5. ティス・イズ・ホェア・アイ・ゲット・オフ "This Is Where I Get Off"
6. フィアー・オブ・フォーリング "Fear of Falling" (Eric Clapton, Robbie Robertson)
7. シーズ・ノット・マイン "She's Not Mine"
8. マダムX "Madame X" (E. Clapton, R. Robertson) ※インストゥルメンタル
9. アクスマン "Axman"
10. ウォント・ビー・バック "Won't Be Back" (E. Clapton, R. Robertson)
11. ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント "How to Become Clairvoyant"
12. タンゴ・フォー・ジャンゴ "Tango for Django" (R. Robertson, Marius de Vries) ※インストゥルメンタル

日本盤ボーナス・トラック

13. ウォント・ビー・バック - デモ・ヴァージョン "Won't Be Back (demo version)" (E. Clapton, R. Robertson)

主な参加ミュージシャン

ロビー・ロバートソン（ボーカル、ギター、キーボード）を中心に、多数のミュージシャンがレコーディングに参加しています。特に、エリック・クラプトンはギターやボーカルで複数の楽曲に参加し、アルバムのサウンドに大きな影響を与えています。

ロビー・ロバートソン - ボーカル、ギター、キーボード
エリック・クラプトン - ギター、スライドギター、ハーモニー・ボーカル、アコースティック・ギター、ボーカル、ガット・ギター
ピノ・パラディーノ - ベース
イアン・トーマス - ドラムス
ロバート・ランドルフ - ペダル・スティール
ビル・ディロン - ギター、Guitorgan
トム・モレロ - ギター
マーティン・プラドラー - エレクトリックピアノ
マリウス・デ・ヴライス - キーボード、ピアノ、オーケストラ・アレンジ
スティーヴ・ウィンウッド - オルガン
トレント・レズナー - アディショナル・テクスチャ
ジム・ケルトナー - ドラムス
エルダッド・ゲッタ - ホーン、オーケストラ・アレンジ
フランク・マロッコ - アコーディオン
アン・マリー・カルフーン - ヴァイオリン
Tina Guo - チェロ
アンジェラ・マックルスキー - ボーカル
ダナ・グローヴァー - バッキング・ボーカル
アンジェリーナ・ボイド - バッキング・ボーカル
ダリル・ジョンソン - バッキング・ボーカル
ロコ・デルーカ - バッキング・ボーカル、ドブロ・ギター
テイラー・ゴールドスミス - バッキング・ボーカル
ミシェル・ジョン - バッキング・ボーカル
シャロン・ホワイト - バッキング・ボーカル
* ナタリー・メンドーサ - バッキング・ボーカル

『ハウ・トゥ・ビカム・クレアヴォヤント』は、ロビー・ロバートソンの円熟した音楽性と、豪華なゲストミュージシャンとの化学反応が結実した作品であり、長年の沈黙を破るにふさわしい、高い評価を得たアルバムと言えるでしょう。

もう一度検索