ハサン・アスカリー

ハサン・アスカリー：シーア派における重要なイマーム

ハサン・アスカリーは、シーア派十二イマーム派において第11代イマームとして重要な位置を占める人物です。846年、マディーナで誕生し、874年に27歳で亡くなりました。彼の名は、軍隊を意味するアラビア語に由来し、これは彼が人生の大半を軍隊の駐屯地であるサーマッラーで過ごしたことに因みます。父は第10代イマームのアリー・ハーディー、母はサリルです。妻はナルジスとされ、シーア派の間ではビザンツ皇女であったと伝えられています。

アッバース朝下での生活と死

ハサン・アスカリーの生涯は、アッバース朝カリフによる厳しい監視下にありました。サーマッラーの家宅に軟禁され、バグダードへの外出も厳重な警護のもとでのみ許されました。この厳しい環境の中でも、彼は深い学識を身につけ、イスラームに関する教授を行い、後世の学者に影響を与えるクルアーン解釈書を編纂しました。

874年、ハサン・アスカリーは毒殺により急死しました。彼の死には、アッバース朝カリフであるムウタミドも何らかの形で関与したとされています。葬儀には多くの関係者が参列し、父と同じサーマッラー・アスカリー・モスクに埋葬されました。このモスクは現在も多くのムスリム、特にシーア派にとって聖地となっていますが、2006年には爆弾テロにより甚大な被害を受けました。

マフディー、ムハンマド・ムンタザル

ハサン・アスカリーの死後、十二イマーム派シーア派の間では大きな混乱は起こりませんでした。しかし、彼にはムハンマド・ムンタザルという息子がいたと信じられており、この人物が終末に現れ世界に平和をもたらすマフディーであるとされています。ハサン・アスカリーが没した時、ムハンマド・ムンタザルは5歳であり、アッバース朝の迫害を逃れて隠遁生活を送ったとされています。

ムハンマド・ムンタザルの存在については、スンナ派ムスリムや一部の学者は異論を唱えています。しかし、シーア派にとっては、このムハンマド・ムンタザルこそがマフディーであり、彼こそがイスラームの終末を導く救世主であるという信仰が根強くあります。

興味深い逸話として、ハサン・アスカリーの葬儀において、弟のジャアファルが導師を務めようとしたところ、少年が現れ、自身がイマームであることを主張し、葬儀の導師を務めたという話が残されています。この少年こそがムハンマド・ムンタザルだと信じられています。

イマームの教え

ハサン・アスカリーは、数々の教えを残しています。その中には、「アッラーを信じることと、ムスリムの益になること以上に優れた特質はない」や、「われわれの従者（シーア）の学者はイスラームの国境の番人である」といった言葉があり、シーア派の信仰と行動の指針となっています。これらの教えは、シーア派の宗教的、社会的な実践に大きな影響を与え続けています。彼の言葉は、信仰の重要性と、社会貢献の必要性を強調しており、現代においても多くのシーア派信者に深く共感されています。彼の生涯と教えは、シーア派にとって永遠に語り継がれるべき貴重な遺産と言えるでしょう。

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