ハプログループC (Y染色体)

Y染色体ハプログループC-M130：人類の拡散を映す遺伝的痕跡

Y染色体ハプログループC-M130は、分子人類学において人類の父系系統を分類する上で重要な指標となる遺伝的マーカーです。M130、RPS4Y711、P184、P255、P260といった複数の単一ヌクレオチド多型（SNP）によって定義され、人類の起源と移動を解き明かす上で貴重な情報源となっています。

人類の拡散とハプログループC-M130

研究者の中には、現生人類の出アフリカ後、南ルート、北ルート、西ルートの3つの主要な経路に分かれて拡散したという説を唱える者もいます。この説に基づくと、ハプログループC-M130の下位系統は、それぞれ異なる経路を辿ったと考えられます。

南ルート: C1b2（C-B477）は、このルートを辿ったと考えられる主要な系統です。オセアニア地域やパプアニューギニアの先住民集団で高い頻度が見られます。
北ルート: C2（C-M217）とC1a1（C-M8）は、北ルートを移動したと推測されています。C2は中央アジア、北東アジア、北アメリカに広く分布し、C1a1は日本、特に沖縄で高い頻度を示します。
西ルート: C1a2（C-V20/V184）は、西ルートを通ってヨーロッパに到達したと考えられています。ヨーロッパ最古層の人類であるクロマニョン人の系統に含まれるとされています。

ハプログループC-M130の下位系統の多様性

ハプログループC-M130は、さらに多くの下位系統に分類されます。それぞれの系統は、地理的な分布や頻度に特徴があり、人類の移動や集団間の遺伝的関係を理解する上で重要な手がかりとなります。

C1a1（C-M8）: 日本、特に沖縄で高い頻度（約9%）が見られます。韓国、朝鮮半島、中国でも稀に見られます。
C1a2（C-V20/V184）: ヨーロッパ、アルジェリア、アルメニア、ネパールなどでわずかに見られます。ヨーロッパ最古層の人類であるクロマニョン人の系統に含まれるとされています。さらに、C1a2a、C1a2a1、C1a2a2、C1a2bなど、複数のサブクラストに分類されます。これらのサブクラストは、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカなどに散在しており、それぞれの地域における歴史的な人口移動を反映している可能性があります。
C1b2（C-B477）: パプアニューギニアの先住民やオセアニア地域の人々に多く見られます。さらに、C1b2a（C-M38）とC1b2b（C-M347）といった下位系統に分類され、それぞれパプアニューギニアとオーストラリアの先住民に特徴的に見られます。
C2（C-M217）: 中央アジア、北東アジア、北アメリカに多く分布します。アルタイ諸語、古アジア諸語、ナデネ語族といった言語系統との関連性が示唆されています。C2a（C-L1373）とC2b（C-F1067）といった下位系統に分類され、C2bは特に東アジア地域で広く分布しています。
その他の系統: C1、C1a、C1b、C1b1、C1b1a、C1b1a1、C1b1a1a、C1b1a1b、C1b1a2、C1b1bなど、多くの下位系統が存在し、それぞれが特有の地理的分布を示しています。

まとめ

Y染色体ハプログループC-M130とその下位系統の分布は、人類の拡散経路や集団間の遺伝的関係を理解する上で重要な情報を提供します。今後の研究によって、さらに詳細な情報が明らかになることが期待されます。これらの研究は、人類の歴史を解き明かす上で重要な役割を果たすと考えられます。

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