ハプログループC1a1 (Y染色体)

ハプログループC-M8 (Y染色体) について

ハプログループC-M8、系統名称ハプログループC1a1は、分子人類学において、父系を辿るY染色体ハプログループの分類における特定のグループを指します。具体的には、ハプログループC1の下位群であるC1aの中で、「M8, M105, M131, P122」という特定の遺伝子マーカーによって定義されるグループです。

分布

日本列島においては、このハプログループC-M8がおおむね5%の頻度で発見されています。日本以外では、韓国の済州島で1人、中国の遼寧省で2人、河北省で1人、北朝鮮の黄海南道で1人、そして韓国で3人が確認されています。これらの地域における分布は、このハプログループの起源や拡散の歴史を理解する上で重要な情報源となります。

起源と拡散

ハプログループC-M8に最も近縁なハプログループであるC1a2との共通祖先は、およそ4万〜5万年前に遡ると推定されています。しかし、現在確認されているC-M8の拡散は約1万2000年前と推定されており、この間には大きな時間的な隔たりがあります。現存する下位系統の共通祖先は、縄文時代以前に日本列島で誕生した可能性も指摘されていますが、詳細については今後の研究が待たれる状況です。

日本国内の頻度

日本国内におけるハプログループC-M8の頻度は、地域によってばらつきが見られます。

沖縄: 9.0% (4.4%-16.7%)
徳島: 5.7%、8.8%、10%
本州: 4.9% (茨城 2.0%、青森 2.5%, 金沢 4.0%, 山口 4.5%、名古屋 4.8% [Y-STRより推定]、静岡 4.9%, 川崎 5.6%, 大阪 6.2%, 東京 7.0%, 青森 7.7%)
九州: 4.4% (佐賀 2.3%, 長崎 3.3%, 九州 3.8%, 福岡 5.9%, 宮崎県 6.5%)
札幌: 4.1%

歴史的背景

ハプログループC1a1（M8）の祖型の移動ルートは、依然として多くの謎に包まれています。最も近縁なC1a2（V20）は、旧石器時代のチェコ、約7000年前の中石器時代のスペイン北西部、同じ頃の新石器時代のハンガリー、そして少数の現代ヨーロッパ人、カビル人、アルメニア人、ネパール人から検出されています。このことは、C1a2がヨーロッパ最古層（クロマニョン人）の集団にも存在した可能性を示唆しています。

さらに遡ると、インドやアラビアなどに散見されるC1b1（M356）、インドネシア東部からメラネシア、ポリネシア、オーストラリアの先住民アボリジニに多く見られるC1b3（B477）との共通祖先C1にたどり着きます。これらの情報から、ハプログループC-M8の起源と拡散のルートを解明するための手がかりが得られるかもしれません。

古人骨からの発見

鳥取県鳥取市の青谷上寺地遺跡で発掘された弥生時代後期の人骨について、県が国立科学博物館や国立歴史民俗博物館と共同で分析を行った結果、4点のうち2点がハプログループC1a1（M8）に属することが判明しました。この発見は、ハプログループC-M8が弥生時代にはすでに日本列島に存在していたことを示唆する重要な証拠となります。

関連事項

ハプログループC (Y染色体)
ハプログループM7a (mtDNA)
港川人
* 縄文人

もう一度検索