ハプログループD (mtDNA)

ハプログループD（mtDNA）は、分子人類学において、ミトコンドリアDNAのハプログループ（型集団）を分類する際に用いられるグループの一つです。このグループは、ハプログループMを祖先に持ち、「4883 5178A 16362」という特定の遺伝子変異によって定義されます。

分布

ハプログループDは、約48,000年前に東アジアで誕生し、その後、東アジア、東南アジア、北アジア、中央アジア、そしてアメリカ大陸にまで広がりました。この分布は、形質人類学におけるモンゴロイドの分布とほぼ一致しています。特に、日本では約41%から42%の人がハプログループDに属しており、その中でもD4が最も多く、日本人の30%以上を占めています。一方、D5はわずか5%程度となっています。また、ハプログループDは長寿の傾向と関連があるとも考えられています。

ハプログループDの起源は中国中部とされており、35%以上の日本人がこのグループに該当します。このグループは、日本以外にも中国や朝鮮半島で多く見られ、東アジア集団を特徴づけるグループと言えるでしょう。また、「稲作の民」の祖先が、中国中部で原始的な稲作を始め、その技術と共に日本に渡来し、弥生時代の到来に貢献したという説も存在します。

下位系統

ハプログループDは、大きく分けて「D4」と「D5・D6」の2つの系統に分類されます。

D4

D4は「3010, 8414, 14668」の変異で定義され、日本人の中で最も多いグループです。北東アジア、特に日本人や朝鮮民族で高頻度で観察されます。ウィルタ、ブリヤート、カルムイク人、テレンギト人などの民族でも頻繁に見られます。また、中国、中国西部、中央アジア、アメリカ先住民などでも広く観察されています。さらに、パレオ・インディアンやロシア沿海州（悪魔の門）、中国東北部の新石器時代初期の遺跡（吉林省大安市にあるホウタオムガ遺跡や内モンゴル自治区通遼市にあるハミンマンハ遺跡など）でも、このハプログループが頻繁に見つかっています。

D5・D6

D5とD6は「16189」の変異によって定義されます。D5はD4よりも歴史が長く、約37,000年から32,000年前に誕生したと考えられています。D5'6（16189）は主に東アジアと東南アジア、特に中国、韓国、日本で見られます。D5a2a2というサブクレードは、アメリカ大陸への移動には参加していないようであり、中央アジア、北アジア、南アジアでの頻度は一般的に低いです。しかし、シベリアのヤクートではこのサブクレードがよく見られます。ヤクートは歴史的にモンゴル拡大の圧力によりシベリアに移住したテュルク語を話すグループです。D5は主に韓国、日本、中国南部で見られ、特に漢民族で多く観察されます。また、東南アジアでも見られます。D5の有名人としては、AAAの西島隆弘さん、上田晋也さん、濱田龍臣さん、糸井重里さんなどが挙げられます。

このように、ハプログループDは、その下位系統も含め、東アジアを中心に非常に広範囲に分布しており、人類の移動や歴史を解き明かす上で重要な手がかりとなっています。

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