ハプロタイプ

ハプロタイプ（haplotype）とは、「haploid genotype（半数体の遺伝子型）」の略で、単倍型とも訳されます。

ハプロタイプの概要

ハプロタイプは、生物が持つ単一の染色体上の遺伝的な構成、具体的にはDNA配列のことです。二倍体生物においては、各遺伝子座における対立遺伝子の一方の組み合わせを指します。また、ゲノム全体、つまり複数の染色体にまたがってハプロタイプを指すこともあり、この場合は特に片親に由来する遺伝子の組み合わせを意味します。通常、母系のミトコンドリアDNAと父系のY染色体が対象となります。

現在では、同一染色体上で統計的に関連のある多型（一塩基多型[SNP]など）の組み合わせを指すことが多くなっています。このような組み合わせが分かれば、特定の範囲内で少数の対立遺伝子を同定することで他の多型座位も特定できます。この情報は、疾患の遺伝的な要因を調べる上で非常に有用であり、現在、国際的なプロジェクトであるInternational HapMap Projectが、この情報を収集・解析しています。

遺伝子型とハプロタイプの違い

遺伝子型とハプロタイプは異なる概念です。個体の遺伝子型からハプロタイプを一意に決定することはできません。

例えば、2つの遺伝子座を考え、それぞれに2種類の対立遺伝子（第1がAまたはa、第2がBまたはb）があるとします。ある個体の遺伝子型がAaBbであるとわかっても、同じ染色体上にどのペアがあるかによって、ハプロタイプのセットは以下の2つの可能性があります。

1. ABとab
2. AbとaB

どのハプロタイプセットが個体に現れているか（つまり、どの対立遺伝子が同じ染色体上にあるか）を特定するためには、追加の情報が必要となります。

多数の個体で[遺伝子]]型がわかれば、共通のハプロタイプがあると考え、ハプロタイプを推定することができます。可能なハプロタイプの組み合わせが判明したら、より少ないハプロタイプで説明できる方法を選択します。この方法には、最大節約法や、尤度関数とそれを計算するアルゴリズム（期待値最大化[[アルゴリズム]やマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)）を用いる方法などがあります。

ハプロタイプの応用

ハプロタイプは、疾患の遺伝的要因の解析に最も期待されています。ハプロタイプは親から子へと受け継がれるため、家系調査にも利用できます。特に男性のY染色体のハプロタイプは、父系の調査に用いられます。Y染色体のハプロタイプはペアをなさないため、他の染色体との乗り換えが起こらず、父から息子へと伝えられます。同じ姓を持つ子孫を調べた場合、その姓の最も古い共通祖先のハプロタイプが見られることがあります。

逆に、ミトコンドリアDNAのハプロタイプは母系を推定するために使用されます。

ハプロタイプは、人類などの集団の比較にも用いられます。ハプロタイプには多様性があり、近い集団では似ていますが、遠い集団では大きく異なります。ハプロタイプをまとめたものをハプログループといい、遺伝的集団を示す指標として用いられ、地理的なまとまりを示すことが多いため、人類の移住の歴史を推定するのに役立ちます。

ハプログループ

ハプログループとは、よく似たハプロタイプの集団のことで、単倍群とも訳されます。単独のハプロタイプには意味がなく、多数のハプロタイプを統計的に処理して初めて意味を持ちます。その際に、似たハプロタイプからなるハプログループが研究対象となります。ハプログループの系統関係を調べることで、生物（特に人間）の系統を知ることができます。ミトコンドリア・イブやY染色体ハプログループなどが関連します。

関連項目

ミトコンドリア・イブ
Y染色体ハプログループ
ミトコンドリアDNAハプログループ
Y染色体ハプログループの分布 (東アジア))
連鎖不平衡

外部リンク

国際HapMap計画

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