ハマボウフウ

ハマボウフウ（浜防風）

ハマボウフウ（学名: Glehnia littoralis）は、セリ科ハマボウフウ属に属する多年草です。海岸の砂地に生育し、食用や薬用として利用されてきました。ここでは、その特徴、分布、利用法などについて詳しく解説します。

名称の由来

和名「ハマボウフウ」は、海岸の砂地に自生することに由来します。中国産のボウフウ（防風）というセリ科植物と根の効能が似ているため、「浜防風」と名付けられました。その他、ヤオヤボウフウ（八百屋防風）、イセボウフウなど、地域によって様々な別名で呼ばれています。

分布

ハマボウフウは、日本、朝鮮半島、中国、台湾、サハリン、千島など、東アジア地域に広く分布しています。日本では、北海道から南西諸島にかけての海岸砂地に自生しています。しかし、近年は海岸の侵食や乱獲により、自生地が減少しており、絶滅危惧種に指定されている地域もあります。

形態・生態

草丈は10～20cm程度で、全体に淡褐色の軟毛が密生しています。葉は三角形で、肉厚で光沢があり、縁には鋸歯があります。根は太く長く、地中深くまで伸びます。花期は初夏から夏で、白い小花が多数集まって球形の花を咲かせます。強い香りを持ちます。

食用としての利用

ハマボウフウは、花が咲く前の柔らかい茎葉を食用にします。独特の香りとほろ苦さがあり、刺身のつま、サラダ、おひたし、和え物、天ぷらなど、様々な料理に利用できます。栽培もされており、スーパーなどで見かけることもありますが、香りは天然ものに比べて穏やかです。

薬用としての利用

ハマボウフウの根は薬用にも利用されます。乾燥させた根は「浜防風」または「北沙参」と呼ばれ、去痰、解熱、鎮咳薬として用いられます。また、民間療法では、咳、のどの乾燥、胃炎、風邪などに効果があるとされています。

ハマボウフウを巡る現状

ハマボウフウは、食用や薬用として利用される一方で、自生地の減少が深刻化しています。海岸開発や環境汚染、乱獲などが原因として挙げられます。ハマボウフウの保護のためには、自生地の保全、栽培技術の向上、資源の適切な管理などが重要です。私たち一人ひとりが、ハマボウフウの現状を理解し、保護に貢献していくことが求められています。

参考文献

貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年
金田初代、金田洋一郎（写真）『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年
* 川原勝征『食べる野草と薬草』南方新社、2015年

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