ハリイ・ハリスン

ハリイ・ハリスン（1925年3月12日 - 2012年8月15日）は、アメリカ合衆国を代表するSF作家の1人です。時に「ハリー・ハリスン」とも表記されます。第二次世界大戦後、イラストレーターとしてSF業界に携わり、その後、喉の病気により絵を描くことができなくなったことをきっかけに小説の執筆を始めました。

初期の活動では、複数のペンネームを使用し、雑誌『ギャラクシィ』などにイラストや小説を寄稿していました。ハリスンは風刺の効いたユーモラスなSFを得意としており、『ステンレス・スチール・ラット』シリーズや『宇宙兵ブルース』はその代表例です。『宇宙兵ブルース』はロバート・ハインラインの『宇宙の戦士』を風刺した作品としても知られています。また、新聞連載漫画『フラッシュ・ゴードン』の主要作家を務めた経験もあります。

1960年、アナログ誌に連載した長編小説『死の世界』がヒューゴー賞候補にノミネートされ、一躍注目を集めました。この作品はその後シリーズ化され、高い評価を得ました。彼の作品はコミカルなものが多くありますが、人口爆発と資源枯渇を描いたシリアスなテーマの作品も手掛けています。特に有名なのが、映画『ソイレント・グリーン』の原作小説となった『人間がいっぱい』です。映画とは設定以外に共通点はほとんどありませんが、この小説はハリスンの2人の子供たちに捧げられた作品でもあります。

評論家としても活躍し、ニューウェーブSFを支持しました。1964年には親友のブライアン・オールディスと共に、SF評論誌『SFホライズン』を創刊。旧態依然としたSFへの批判を展開し、アンソロジー編集なども積極的に行いました。オールディスと共にバーミンガムSFグループの共同社長も務めています。また、ミステリ作家レスリー・チャータリスの「セイント」シリーズの代筆も行った経験があります。

国際的な活動も盛んで、アメリカだけでなく、メキシコ、イングランド、デンマーク、イタリアなど各国で生活し、最後はアイルランドに落ち着きました。1973年には、ジョン・W・キャンベル記念賞をレオン・ストーヴァーと共に創設。世界SF会議の組織者としても活動し、1990年にはワールドコンのゲスト・オブ・オナーにも選ばれています。

ハリスンの作品は、浅倉久志氏らによって日本語に翻訳され、日本のSFファンにも広く親しまれています。浅倉氏は、『宇宙兵ブルース』を特に気に入っていたと語っています。2002年には妻を亡くしましたが、晩年まで精力的に執筆活動を続けました。2009年にはアメリカSFファンタジー作家協会からデーモン・ナイト記念グランド・マスター賞を受賞、2012年に87歳で死去しました。

主な作品には、『ステンレス・スチール・ラット』シリーズ、『死の世界』シリーズ、『宇宙兵ブルース』『人間がいっぱい』『テクニカラー・タイムマシン』『銀河遊撃隊』などがあります。これらの作品は、ユーモラスな語り口とスリリングな展開、そして社会的なメッセージを巧みに融合したハリスンならではのスタイルで描かれています。彼の作品は、現代社会の問題を鋭く指摘しながらも、読者に希望とユーモアを与え続ける、タイムレスな魅力に溢れています。彼の功績は、現代SF文学に多大な影響を与え、世界中の読者に愛され続けています。

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