ハリー・オード

ハリー・オード：『∀ガンダム』に咲く一輪の忠誠

『∀ガンダム』に登場するハリー・オードは、月の女王ディアナ・ソレルの親衛隊長という重責を担う人物です。稲田徹氏が声を担当し、そのクールな佇まいと、主君への絶対的な忠誠心で多くの視聴者を魅了しました。

クールな忠義者、その内面に潜む危うさ

赤い暗視グラスがトレードマークのハリーは、冷静沈着で思慮深い人物として描かれています。しかし、その忠誠心は時に常軌を逸し、融通の利かない一面を見せることも。ディアナのためならば手段を選ばない彼の行動は、「ディアナの飼い犬」と揶揄されることもあります。罪悪感に苛まれるミドガルドに対し、生身であるにも関わらずモビルスーツで圧殺するという冷酷な一面は、彼の二面性を象徴する出来事と言えるでしょう。

しかし、ハリーの複雑さはそれだけに留まりません。ディアナ以外の人物に対する無責任な態度や、ロラン・セアックの女装姿に心を奪われるといったコミカルな一面も持ち合わせています。過去には離婚歴があり、元妻の名前を愛機に付けるなど、人間味溢れるエピソードも散見されます。

金色のスモーを駆る、卓越したパイロット

ハリーの愛機は、金色のスモー。その操縦技術は作中でも群を抜いており、∀ガンダムを圧倒したり、ウォドムのビーム砲撃をハンドビームガンで受け止めたりするほどの腕前です。敵機を爆散させずに無力化する技術は、彼の冷静さと精密さを物語っています。

ディアナへの忠誠、そしてキエルへの愛

物語が進むにつれ、ハリーはディアナとキエル・ハイムの入れ替わりに気付き始めます。そして、キエルを護衛するうちに、彼女に恋心を抱くようになります。福井晴敏氏の小説『月に繭地には果実』では、ディアナへの密かな恋心も描かれており、彼の複雑な感情がより深く掘り下げられています。

最終決戦では、ターンXとの戦闘中に「ユニヴァース!」という印象的なセリフを発します。これは、富野由悠季監督が絵コンテを描く際に急遽追加されたもので、感情が高ぶった際に発する感嘆符として、ムーンレィスの間で共通の言葉として設定されました。

戦後、そして悲劇的な結末

戦後、ハリーはキエル・ハイムを女王とし、彼女の親衛隊隊長として忠誠を誓います。しかし、『月に繭地には果実』では、ロランへの嫉妬心やグエン・サード・ラインフォード、アグリッパ・メンテナーへの怒りから暴走し、地球に向けて月面砲を発射するという悲劇的な結末を迎えます。

ゲーム作品での描かれ方

ゲーム作品では、クワトロ・バジーナとの関係が強調される傾向にあります。『SDガンダム GGENERATION』シリーズでは、クワトロが自分と同じ理由でサングラスを着用していると勘違いするシーンや、『スーパーロボット大戦』シリーズでは、金色の機体を駆る者同士として、互いを賞賛する会話が交わされます。

服装：奇抜なセンスの持ち主？

銀髪と特徴的な暗視グラスがトレードマークのハリー。暗視グラスは「女性を見る視線を隠すため」と語っていますが、シャア・アズナブルを連想させる仮面の人物としても認識されています。

正装は黄色と黒の縦縞で、その奇抜さから「阪神王子」と呼ばれていたというエピソードも。変装時のピンクのYシャツや星柄のパジャマなど、一般的なファッションセンスとはかけ離れた一面も持ち合わせています。

評価

『愛と戦いのロボット 完全保存版』で発表されたアンケート「みんなで選ぶロボットアニメーションベスト100」では、「一番カッコイイヒーローは？」で第71位にランクインしています。

ハリー・オードは、『∀ガンダム』という作品において、忠誠心、愛情、そして狂気を内包した、複雑で魅力的なキャラクターとして、多くの人々の記憶に残る存在と言えるでしょう。

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