ハリー・ペイン・ホイットニー

ハリー・ペイン・ホイットニー：実業家から競馬王へ

ハリー・ペイン・ホイットニー（1872年4月29日-1930年10月26日）は、アメリカ合衆国を代表する実業家であり、20世紀初頭のアメリカ競馬界を牽引した名馬主として知られています。ホイットニー家は、その祖ウィリアム・コリンズ・ホイットニーの成功から巨万の富を築き、ハリーはその家系を受け継いだ一人でした。

裕福な生い立ちと華麗なるキャリア

マサチューセッツ州グロットンで生まれ、名門グロットン・スクールを経てイェール大学を卒業。イェール大学時代には、名門秘密結社であるスカル・アンド・ボーンズにも所属していました。1894年に法学の学位を取得した後、彼はビジネスの世界へと進出します。1904年に父ウィリアムが死去すると、莫大な遺産、およそ2400万ドルを相続。さらに、1917年には伯父からの遺産約1200万ドルを受け継ぎました。

その後、ヴァンダービルト家の令嬢ガートルード・ヴァンダービルトと結婚。この縁により、ヴァンダービルト家の事業にも参画し、ロングアイランド公園道路の取締役会にも名を連ねました。ホイットニーは、多方面にわたる慈善活動でも知られており、1920年にはアメリカ自然史博物館の調査隊に多額の資金を提供し、太平洋諸島の植物や鳥類の研究を12年間にわたって支援しました。

ポロからヨットレース、そしてクイルハンティング

ホイットニーは、幼少期から父の影響を受けてポロを愛好し、1909年には後にイングランド代表を破ることになる全米ポロチームの結成にも貢献しました。ポロ競技用の馬の生産牧場を開設するなど、スポーツへの情熱は並々ならぬものがありました。さらに、彼はヨットレースにも挑戦。モントークヨットクラブの取締役を務め、自身の所有するヨット「ヴァニティー号」でアメリカスカップにも出場しました。また、ホイットニーはクイルハンティング（ウズラ狩り）も趣味としており、1920年代にはフロリダ州に広大な狩猟用地を購入しています。

競馬界における偉大な功績

ホイットニーの遺産には、牧場や競走馬なども含まれており、彼は父から引き継いだ競馬への情熱をさらに深めていきます。20世紀初頭のアメリカ競馬界において、ホイットニーは中心的な存在として活躍しました。種牡馬ハンバーグ、後にブルームスティックを主軸に、数々の名馬を生産。ウィスクブルームIIやリグレットなど、アメリカ競馬史に名を刻む名馬を輩出しました。

特に注目すべきは、彼の所有馬が数々のステークス競走で優勝したこと。アメリカ最優秀生産者に8度も選出され、所有したステークス競走勝ち馬は約200頭に及びます。アートフル、ターニャ、バーゴマスター、ウィスクブルームII、リグレット、ジョーレン、ヴィクトリアン、ウィスクリー、エクイポイズなど、数々の名馬が彼の所有馬として活躍しました。なかでもプリークネスステークスの勝ち馬は6頭に上り、長らく同競走の最多勝利記録を保持しました。

晩年とその後

1930年、58歳でこの世を去ったホイットニー。彼の莫大な資産は、息子のコーネリアス・ヴァンダービルト・ホイットニーに相続されました。タイム誌は、彼の死後、ニューヨーク州が彼の資産を6280万8000ドルと推定したと報じています。また、彼が所有していたスポーツ関連の絵画は、イェール大学アートギャラリーに寄贈されました。ホイットニーの生涯は、莫大な富と、それに裏打ちされたスポーツへの情熱、そしてアメリカ競馬界への貢献によって彩られた、まさに華麗なものでした。

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