ウィスクブルーム

ウィスクブルームII：伝説的名馬の生涯

ウィスクブルームII (Whisk Broom II、1907年 - 1928年) は、アメリカ競馬史に燦然と輝くサラブレッド競走馬にして、名種牡馬です。1913年、史上初のニューヨークハンデキャップ三冠を達成するという偉業を成し遂げ、アメリカ競馬殿堂入りを果たしたその輝かしい経歴は、今なお語り継がれています。本稿では、その生涯を詳細に紐解きながら、その魅力に迫ります。

幼少期とイギリス時代

ケンタッキー州のセニョリータスタッド牧場で生まれたウィスクブルームIIは、幼駒の頃にイギリスへと渡り、名調教師アンドリュー・ジャクソン・ジョイナーの手に渡ります。その後、大馬主ハリー・ペイン・ホイットニーへと売却されました。

イギリスでの競走生活は2歳(1909年)にスタート。プリンスオブウェールズプレートで初勝利を飾ると、秋にはミドルパークステークスとデューハーストステークスで好走、将来を嘱望される存在となりました。3歳時には2000ギニーで3着に入るなど、高い競争力を示しました。4年間のイギリスでの戦績は23戦7勝。中でも、5歳時に128ポンドという斤量を背負って勝利したヴィクトリアカップハンデキャップは特筆すべきでしょう。

アメリカでの活躍と衝撃の引退

6歳でアメリカへと渡ったウィスクブルームIIは、ジェームズ・ゴードン・ロウ・シニア調教師の管理下に置かれました。アメリカには同名の馬がいたため「ウィスクブルームII」と呼ばれることとなります。

アメリカでの初戦は、メトロポリタンハンデキャップ。見事な勝利を収め、続くブルックリンハンデキャップ、サバーバンハンデキャップも制覇し、アメリカ競馬界に衝撃を与えました。ブルックリンハンデキャップでは130ポンドの斤量でダート10ハロンのトラックレコードを樹立、サバーバンハンデキャップでは139ポンドという重い斤量で2分というアメリカレコードを記録しました。これらの快挙により、ウィスクブルームIIは瞬く間にアメリカで最も人気のある馬となりました。しかし、サバーバンハンデキャップから1か月後、ひどい跛行のため惜しまれつつも引退することとなります。わずか3戦ながら、その圧倒的な強さで、同年の年度代表馬に選出されました。

種牡馬としての成功と血統の系譜

引退後は種牡馬として活躍。ケンタッキーダービー優勝馬ウィスクリー、プリークネスステークス優勝馬ヴィクトリアン、最優秀3歳牡馬ウィスカウェイなど、多くの活躍馬を輩出しました。さらに、母の父として1930年代のアイドルホース、シービスケットにもつながるなど、その血統は現代競馬にも大きな影響を与えています。しかし、ウィスクブルームIIの父系はその後は衰退し、現在ではその血統は途絶えています。

晩年と評価

ウィスクブルームIIは1928年、繋養先のホイットニーファームで亡くなりました。その功績は高く評価され、1979年にはアメリカ競馬名誉の殿堂博物館に選定されています。イギリスとアメリカ両国の競馬史に名を刻んだウィスクブルームIIは、まさに伝説の名馬と言えるでしょう。その輝かしい戦績と、種牡馬としての成功は、後世の競馬ファンに語り継がれる、不滅の物語として残ることでしょう。

主な勝ち鞍

1909年（2歳）：プリンスオブウェールズプレートなど
1910年（3歳）：トライアルステークス、セレクトステークスなど
1912年（5歳）：ヴィクトリアカップハンデキャップ
1913年（6歳）：メトロポリタンハンデキャップ、ブルックリンハンデキャップ、サバーバンハンデキャップ（ニューヨークハンデキャップ三冠）

受賞歴

1913年：アメリカ年度代表馬、最優秀古牡馬
1979年：アメリカ競馬名誉の殿堂博物館殿堂入り

もう一度検索