ハンガリー民主フォーラム

ハンガリー民主フォーラム：民主化への貢献と挫折の歴史

ハンガリー民主フォーラム（Magyar Demokrata Fórum, MDF）は、共産主義体制下のハンガリーで1987年に誕生した政党です。当初は、共産主義体制に批判的な知識人や文化人が集まり、民主化運動の中核を担いました。自由民主同盟（SZDSZ）といった都会派の知識人中心の政党とは異なり、MDFはハンガリーの伝統や歴史を重んじる国民派や農民派の支持を集め、独自の路線を歩みました。

1989年、アンタル・ヨージェフを党首に迎え、保守・キリスト教民主主義政党としての道を歩み始めます。同年に行われた汎ヨーロッパ・ピクニックにも関与し、民主化への積極的な姿勢を示しました。

1990年の最初の自由選挙で勝利を収め、アンタル・ヨージェフ首相率いるMDF政権が発足。ハンガリーは新たな民主主義国家への道を歩み始めました。しかし、1993年にヨージェフ首相が死去すると、政権は不安定化。1994年の選挙では社会党に敗れ、野党に転落します。

その後、MDFは、党内分裂や政権奪還への苦戦を繰り返すことになります。1998年の選挙では、フィデス＝ハンガリー市民党（現在のフィデス＝ハンガリー市民同盟）と選挙協力を結び、連立政権に参加。しかし、2002年の選挙では、フィデスとの関係悪化により、議席数を減らす結果に終わります。

2006年の選挙では単独で選挙に臨みましたが、議席数はさらに減少。2009年の欧州議会議員選挙では、党内対立により幹部の離党が相次ぎ、党の求心力は低下していきました。

2010年の選挙では、かつてのライバルであったSZDSZと選挙協力を模索しますが、党内反発が強まり、地域リスト提出に必要な候補者を擁立できない事態に陥ります。結果、得票率は5％の阻止条項を下回り、全議席を失うという惨敗を喫しました。この結果を受けて、ダーヴィト・イボヤ代表は辞任。

2011年2月、党大会において党名を「福祉と自由の民主主義者団体」（Jólét és Szabadság Demokrata Közösség, JESZ）に変更することを決定し、ハンガリー民主フォーラムとしての歴史に幕を閉じました。

MDFは、ハンガリーの民主化に大きく貢献した一方、党内分裂や選挙戦略の失敗により、その歴史に大きな影を落としています。その盛衰は、民主主義の確立がいかに困難な道のりであるかを示す、重要な事例と言えるでしょう。MDFの歴史を振り返ることで、民主主義の維持・発展のために必要な要素を改めて考えることができます。 様々な困難や試練を経験しながらも、ハンガリーの民主化に貢献したMDFの歴史は、未来への教訓として、後世に語り継がれていくべきでしょう。

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