ハンス＝ユルゲン・フォン・ボーゼ

ハンス＝ユルゲン・フォン・ボーゼ

ハンス＝ユルゲン・フォン・ボーゼは、1953年にドイツで生まれた現代音楽の作曲家です。名門の家柄に生まれ、幼い頃から非凡な才能を示しました。彼は、同時代のヴォルフガング・リームと並んで「新ロマン主義」と呼ばれる音楽的な潮流の重要な人物と見なされています。

特に、ボーゼは非常に早熟な作曲家として国際的に注目されました。わずか21歳でオペラ「Blutbund (Ramon del Valle-Inclan)」を書き上げるなど、若い時期からその才能を発揮しました。彼はオペラ作品に特に力を注ぎましたが、室内楽やオーケストラ作品といった伝統的な編成においても、優れた手腕を示しました。ゲーテの小説に基づく舞台作品「若きウェルテルの悩み」によって、彼は同世代を代表する作曲家の一人としての地位を確立しました。

日本においても、ボーゼの作品は比較的早い段階から紹介されていました。1992年には、京都ドイツ文化センターで開催された日独現代音楽交流会で、彼の特集が組まれています。この特集のために来日する予定でしたが、残念ながらインフルエンザを発症し、来日は実現しませんでした。

ボーゼの作曲活動は、ドイツ現代音楽界における主要な潮流とは一線を画す部分があります。かつて前衛音楽の牙城とされていたダルムシュタット夏季現代音楽講習会に一時身を置きましたが、シュトゥットガルトやベルリンを中心とする学派がドイツ国内で影響力を強めるのを見て、彼はすぐにそこから離れました。そして、より穏健な音楽語法を好むミュンヘンを主な活動拠点とし、特にオペラ作品を精力的に作曲し、発表することで知られるようになりました。

彼は自身の音楽について、「網化された時間」といった概念や音楽構造の複雑さを語ることがありますが、実際にその作品に接すると、音楽の密度はむしろ平均的であり、耳に心地よい旋律や和声を見出しやすい傾向があります。全体としては、静謐で落ち着いた響きを持つ音楽が彼のスタイルと言えるでしょう。現在、ボーゼはミュンヘン近郊のツォルネディングに住んでおり、彼の作品の多くは、国際的な楽譜出版社であるショット社から出版されています。

作曲家としての活動に加え、ボーゼは教育者としても多くの後進を育てました。彼の弟子の中には、エリザベート王妃国際音楽コンクールの作曲部門で近年優勝したJeon Minjeがいます。また、モーリッツ・エッゲルトをはじめ、多数の優れた音楽家が彼の指導を受けています。かつてはオーストリアのザルツブルクにあるモーツァルテウム大学でも教えており、近年までミュンヘン音楽・演劇大学で教授を務めていましたが、2015年5月をもって大学での職を辞しています。

長年にわたり作曲家および教育者として活動してきましたが、2019年10月1日、彼は一切の音楽活動から身を引くことを発表しました。これは、ある不祥事の責任をとる形での引退とされています。

ボーゼは幅広いジャンルで重要な作品を残しています。代表的な舞台作品には、「Blutbund」、「若きウェルテルの悩み」、「63:Dream Palace」、「Schlachthof V」などがあります。声楽作品、オーケストラ作品、室内楽、ピアノ作品も数多く作曲しており、「Morphogenisis」や「Travesties in a Sad Landscape」といったオーケストラ作品、「Musik für Cello solo」などの室内楽作品が知られています。

彼の業績は高く評価されており、ヒッツァッカー国際作曲賞第1位、Deutscher Kritikerpreis、Hessischer Kulturpreis、Schneider-Schott-Musikpreis Mainz、Förderpreis des Siemens Musikpreisesなど、ドイツ国内外で数々の権威ある賞を受賞しています。また、教育者としての功績も認められ、Christoph-und-Stephan-Kaske-Stiftungから賞を受けています。

もう一度検索