ハーブ園

ハーブ園とは

ハーブ園（ハーブガーデン）は、ハーブを主体とした花壇や庭のことで、香草や薬草であるハーブを栽培し、その収穫や利用、あるいは草姿、花、香りを楽しむことを目的とした庭園です。薬草を栽培している場合は、特に薬草園と呼ばれることもあります。

ハーブ園の歴史

西洋では、中世の修道院でバラやハーブを中心とした庭が作られ始めたのがハーブ園の起源とされています。この初期のハーブ園は、医薬用植物の栽培という実用的な側面を持っていました。ハーブ類を主体に庭を構成すると、花が少なく緑色が多くなる傾向がありますが、現在では、草木の高さや大きさ、遠近法などを駆使して変化をつけ、カラーリーフなども多用することで、視覚的にも楽しめる庭園デザインが主流となっています。

日本では、江戸時代に幕府が各地の薬草園に採薬使を派遣し、各地の人々に薬草の知識を広めるとともに、幕府へ薬を持ち帰る活動を行っていました。

ハーブ園の例：ハーブスパイラル

ハーブスパイラル（ハーブスネイル）は、立体的なガーデニングベッド（高床）でキッチンハーブを栽培する手法の一つです。パーマカルチャーデザインの一例として知られています。この構造は、異なる気候帯の植物が必要とする条件を、非常に小さなスペースで満たすことを可能にするという特徴があります。

ハーブスパイラルの構造

ハーブスパイラルは、螺旋状に石を積み上げて作られ、上に向かって高くなっています。充填された土は、上部ほど砂が混ざり、透水性が高くなっています。下部には、南側（北半球では北側）の日陰に小さな池が設けられていることが多く、これにより湿度の高いマイクロクライメイトが形成されます。

中央部分はノーマルゾーンと呼ばれ、腐植質も残っているものの、湿潤地帯よりも透水性が高い土壌です。このゾーンは、中央ヨーロッパの一般的な栽培条件に近く、パセリ、コリアンダー、タラゴン、キャラウェイ、オレガノ、バジルなどが良く育ちます。また、部分的に日陰になっている場所もあります。

螺旋の上部には乾燥地帯が形成されます。土壌は透水性が高く、水はけが良い構造になっているため、セージ、タイム、ラベンダーなど、地中海沿岸のハーブの栽培に適しています。これらのゾーン間の移行は流動的で、様々な栽培条件に対応できます。

ハーブスパイラルと生態系

ハーブスパイラルは、害虫駆除と同時に花の受粉をサポートするエコロジーの観点からも優れています。巣作り補助剤を使用することで、動物にとって適切な生息環境を形成することが可能です。近年、自然環境が減少している中で、ニッチな巣箱は、様々な鳥にとって重要な生息地となっています。捕食者対策を施したキャビティを使用することで、ミソサザイやルリビタキなどの鳴禽類を保護することができます。また、スパイラルの南側に設置された昆虫の巣箱は、野生のハチやジガバチなどのヒメバチ類の生息地となり、害虫の個体数を調整する役割も果たします。哺乳類の場合は、害虫駆除に有効なトガリネズミの住処にもなります。さらに、イモムシやナメクジを食べるハリネズミのために、ハリネズミ用の巣箱を設置することも効果的です。

ハーブスパイラルの歴史

ハーブスパイラルの概念は、オーストラリア人のビル・モリソンによって提唱されました。彼は1981年に「パーマカルチャー」の概念で「ライト・ライブリフッド賞」を受賞しており、同年、講演で1978年にアボリジニの砂紋からヒントを得てハーブスパイラルを発明したことを紹介しました。1988年に出版された著書『パーマカルチャー：デザイナーズ・マニュアル』には、自然界や様々な原始民族の間で象徴的な螺旋形が普遍的に存在することが詳しく述べられており、彼のハーブ・スパイラルの図も掲載されています。パーマカルチャーの要素の中でも、ハーブスパイラルは特に初期から注目され、世界中のプロやアマチュアのガーデナーによって模倣されています。ガーデンショーやモデルガーデンでもよく見られるデザインです。

参考資料

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