ハープ協奏曲 (ヘンデル)

ヘンデル ハープ協奏曲 変ロ長調 HWV294a

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルによって1736年に作曲された「ハープ協奏曲 変ロ長調 HWV294a」は、独奏ハープのための協奏曲であり、世界初のハープ協奏曲として音楽史に名を刻んでいます。この作品は全3楽章で構成されており、ヘンデルの豊かな音楽性とハープの美しい音色が融合した、バロック音楽の傑作として高く評価されています。

作曲の経緯

ヘンデルは、自身の舞台作品上演時に幕間の余興として演奏するために、多くの協奏曲や合奏協奏曲を作曲しました。このハープ協奏曲も、1736年2月19日にコヴェント・ガーデン劇場で初演された頌歌『アレクサンダーの饗宴』の上演時に、同時に初演されました。一夜の出し物としては時間が短かったため、ハープ協奏曲に加えて、合奏協奏曲ハ長調「アレクサンダーの饗宴」HWV318、イタリア語カンタータ『チェチーリアよ、まなざしを向けたまえ』HWV89、オルガン協奏曲ト長調HWV289の計4曲が作曲されました。

ただし、ハープ協奏曲は幕間用ではなく、頌歌の本編に組み込まれて演奏された点が特徴的です。1738年に出版された『アレクサンダーの饗宴』の出版譜にはこの協奏曲は収録されていませんが、第1部のレチタティーヴォ「いと高く座したるティモテウス」の後に「ハープ、リュート、リリコード、その他のための協奏曲」が置かれており、このハープ協奏曲のことであると考えられています。このレチタティーヴォは、ティモテウスのリラ演奏の様子を歌っており、ハープ曲が演奏されるのは歌詞の内容とも合致しています。

ヘンデルが使用したハープはトリプル・ハープと呼ばれるもので、ペダルを使わずにすべての半音を演奏することができましたが、演奏は非常に困難でした。ヘンデルは、この楽器をオペラ『ジュリオ・チェーザレ』、オラトリオ『エステル』、『サウル』などでも使用しています。

初演から2年後の1738年には、『オルガン協奏曲集作品4』（全6曲）が出版され、ヘンデル自身がこのハープ協奏曲をオルガン協奏曲として編曲したものが、第6番（HWV294）として収録されました。オルガン版もまた、今日まで広く親しまれています。

曲の構成

管弦楽の楽譜は、リコーダーと弱音器付きのヴァイオリン2部、そして低音（ヴィオラ、チェロ、コントラバス、チェンバロ）の3段から構成されています。ヴァイオリンに弱音器が付けられていること、低音がピッツィカートで演奏されること、管楽器がリコーダーのみであることなどは、独奏楽器であるハープの音色を際立たせるための配慮であると考えられます。曲は、全奏部分と独奏楽器のみの部分が交互に現れる構成となっています。

楽章構成

1. Andante allegro, 4⁄4拍子 変ロ長調
2. Largetto, 3⁄4拍子 ト短調
3. Allegro moderato, 3⁄8拍子 変ロ長調

使用

特に第1楽章の冒頭は、親しみやすい旋律で広く知られており、マツダ・ルーチェやハウス食品のザ・ホテル・カレーなどのコマーシャルのBGMとしても使用されています。また、第2楽章の一部は、過去にサンテレビのクロージングに使用されていました。

ヘンデルのハープ協奏曲は、バロック音楽の美しい旋律とハープの繊細な音色が織りなす、時代を超えて愛される名曲です。

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