マツダ・ルーチェ

マツダ・ルーチェ：輝きを放った29年の歴史

マツダ・ルーチェは、1966年から1995年まで製造された同社の高級乗用車です。ファミリアに続くマツダの普通乗用車として登場し、長きに渡りマツダのフラッグシップモデルとして君臨しました。その歴史は、時代の変化と技術革新を反映した数々のモデルチェンジによって彩られています。

初代モデル (SUA/SUAV/SVA型、1966年-1972年)

1966年8月にデビューした初代ルーチェは、1,500ccクラスでは珍しかったフロント3人掛けの6人乗りセダンでした。ジョルジェット・ジウジアーロによるデザインが特徴で、UB型SOHCエンジンを搭載。スーパードライブ（AT車）、デラックス、スタンダードの3グレードが設定されました。1967年には高出力エンジンとフロントディスクブレーキを備えたSSモデルやバンが追加され、同年にはロータリーエンジンを搭載した「ルーチェロータリークーペ」も登場しました。1968年にはマイナーチェンジを行い、1800ccモデルもラインナップに加わりました。

2代目モデル (LA22S/LA2VS/LA2VV/LA33S/LA3VS/LA22SB型、1972年-1978年)

1972年11月に登場した2代目ルーチェは、「大鷲」をテーマにしたアメリカ車風のデザインが印象的でした。4ドアセダン、2ドアHTに加え、カスタムモデルも設定され、後にバンやワゴンも追加されました。この世代からロータリーエンジン搭載車がラインアップに加わり、12A型REエンジンを搭載したモデルが注目を集めました。4速、5速、REマチックの組み合わせが用意され、グレードも豊富に設定されました。しかし、第一次オイルショックの影響を受け、ロータリーエンジンの燃費の悪さが課題となり、販売台数は減少していきました。その後、レシプロエンジン搭載モデルの追加や排ガス規制への対応、燃費向上のための改良などが行われました。

3代目モデル (LA42S/LA43S/LA4MS/LA4VS型、1977年-1988年)

1977年10月に発売された3代目モデルは、当初「ルーチェレガート」という名称で販売されましたが、後に「ルーチェ」に戻されました。ダッジ・モナコを思わせる縦配置型4灯式ヘッドライトが特徴で、4ドアHTと4ドアセダンが設定されました。ロータリーエンジン搭載車は13B型に絞られ、2000ccレシプロエンジン搭載車も充実しました。1979年のマイナーチェンジでは、角型2灯式ヘッドライトに変更され、REエンジンのパワーアップも図られました。1981年にはセダンと4ドアHTがフルモデルチェンジされ、バンはカペラカーゴとして1988年まで生産が続けられました。

4代目モデル (HBSHE/HBPHE/HBPH8/HBSN2型、1981年-1986年)

1981年10月に登場した4代目ルーチェは、コスモと兄弟車という関係になりました。4ドアハードトップと4ドアセダン（サルーン）が設定され、内装も大幅に変更されました。この世代では、省燃費対策を施したロータリーエンジンやディーゼルエンジン、世界初のロータリーターボエンジン搭載車などが追加されました。1983年のマイナーチェンジでは、フロントマスクのデザイン変更や新開発のマグナムエンジンへの換装などが行われました。1986年にはルーチェがフルモデルチェンジし、コスモは2ドアHTと4ドアHTのみとなり、1990年3月のユーノス・コスモ登場まで販売が続けられました。また、4代目ルーチェの車体を流用したタクシー専用車「カスタムキャブ」も1989年に登場しました。

5代目モデル (HCSS/HCEP/HCFS/HC3S/HCEJ/HC2J型、1986年-1995年)

最後の世代となる5代目ルーチェは、1986年9月に発売されました。ロータリーエンジンに代わってV型6気筒エンジンを搭載した本格的な高級サルーンとして生まれ変わりました。欧州車のようなオーソドックスなデザインが特徴で、「広島のベンツ」と呼ばれることもありました。2.0L直4エンジン、2.0L V6エンジン、2.0L V6ターボエンジン、そして4ドアHTにはロータリーターボエンジンも用意されました。タクシー仕様も設定されました。韓国の起亜自動車でもセダンモデルが「ポテンシャ」として生産・販売されました。1987年には3.0L V6エンジン搭載モデルが追加され、1988年のマイナーチェンジでV6 3.0LエンジンがDOHC化されました。1991年には自家用モデルの生産が終了し、営業車のみの販売となりました。そして、1995年12月に29年の歴史に幕を閉じました。

車名の由来

ルーチェという車名は、イタリア語で「光」「輝き」を意味します。初代モデルの広いグラスエリアを象徴する意味合いも込められています。

まとめ

マツダ・ルーチェは、時代に合わせて進化を遂げながら、マツダのフラッグシップモデルとして長く愛されてきました。ロータリーエンジン搭載車としての歴史も重要な要素であり、日本の自動車史にその名を刻む一台といえるでしょう。

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