ハーロウ&ウィールドストーン鉄道事故

ハーロウ&ウィールドストーン鉄道事故

ハーロウ&ウィールドストーン鉄道事故は、1952年10月8日午前8時19分にイギリス・ウェスト・コースト本線のハーロウ&ウィールドストーン駅で発生した大規模な列車衝突事故です。この悲劇的な事故では、列車の追突によって112名が命を落とし、340名以上が負傷しました。これは1915年のキンティンスヒル鉄道事故に次いで、イギリス国内で2番目に多い死亡者数を記録した事故です。

事故の概要

ハーロウ&ウィールドストーン駅は、複数の線路が交差する重要な駅でした。この駅には、上下線のホームがあり、駅の南にあるユーストン駅方面への列車が上り線、北にあるワットフォードおよびバーミンガム方面への列車が下り線として運行されています。事故に関わったのは、3本の列車でした。

1. トリング駅発ユーストン行きの上り普通列車（LMS型2-6-4T蒸気機関車牽引、乗客約800名）。濃霧により約7分遅れで運行中。
2. パース駅発ユーストン行きの上り夜行急行列車（LMSコロネーション級蒸気機関車牽引、乗客85名）。こちらは約80分遅れでした。
3. ユーストン駅発リヴァプール行きの下り急行列車（LMSジュビリー級蒸気機関車とプリンセス・ロイヤル級蒸気機関車による重連運転、乗客約200名）。

悲劇は午前8時19分に発生しました。上り普通列車が停車していた際、後続の夜行急行列車が停止信号を無視して追突し、その衝撃で普通列車は前方に押し出されました。これが引き金となり、下りの急行列車がその残骸に衝突します。

事故後の救助活動

事故直後、緊急サービスが迅速に現場に入り、同時に消防や救急、警察が活動を開始しました。特に注目すべきは、アフリカ系アメリカ人の看護師アビー・スイートワインが「6番線の天使」として知られ、多くの負傷者を助けたことです。負傷者は意識を失っている者も多く、救急車が続々と病院へ向かう中、現場では生存者の捜索が続けられました。

事故の教訓

事故は、イギリス国鉄の安全基準に大きな影響を与えました。この悲劇を受けた後、自動列車警報装置（AWS）の導入が加速し、今ではイギリス国内の多くの鉄道路線に設置されています。事故調査の報告書では、運転士による信号確認の怠慢が事故の原因とされていますが、運転士は健康であったことが強調されています。信号の視認性や進行方向を誤認した可能性についても言及されており、鉄道の安全性向上のための技術的な後押しが必要だとされました。

事故の遺産

事故後、イギリス鉄道における運転士への技術支援が進められ、さらなる安全対策が講じられるようになりました。事故から数十年が経つ今でも、ハーロウ&ウィールドストーン駅の事故は教訓として語り継がれています。記念プラークも設置され、事故の歴史を後世に伝える役割を果たしています。また、事故を題材にした楽曲も発表され、広く知られる存在となっています。

このように、ハーロウ&ウィールドストーン鉄道事故はただの悲劇ではなく、鉄道安全の重要性を再認識させる重要な出来事でした。今後も、この事故の教訓が世界中の交通安全に寄与することを願います。

もう一度検索