ユーストン駅

ユーストン駅：ロンドンの玄関口とその歴史的変遷

ロンドン中心部の北部、カムデン区に位置するユーストン駅は、イギリスを代表する主要鉄道ターミナル駅です。乗降客数でロンドン6位を誇り、ウェスト・コースト本線南の終着駅として、イングランド中西部、北西部、北ウェールズ、そしてスコットランドへのアクセス拠点となっています。ロンドン地下鉄ユーストン駅にも直結し、ユーストン・スクエア駅も至近距離にあり、利便性も抜群です。

歴史：古い伝統と近代建築の融合

現在の駅舎は国際的な近代建築様式ですが、ユーストン駅の歴史は古く、ロンドンのターミナル駅の中でも最も古い部類に入ります。1837年7月20日、ロンドン・アンド・バーミンガム鉄道の終着駅として開業しました。

旧駅舎：古典主義建築の傑作と拡張の歴史

初代駅舎は、古典主義建築家フィリップ・ハードウィックによる設計で、高さ22メートルにも及ぶ印象的なドーリア式プロピュライア（ユーストン・アーチとして知られる）が象徴的な存在でした。61メートルの錬鉄製のトレイン・シェッドや、1849年に完成した壮大なグレート・ホール（長さ38メートル、幅19メートル、高さ20メートル）など、見事な建築物が旅客を迎えていました。グレート・ホールには、ロンドン、リヴァプール、マンチェスターなど、鉄道で結ばれる主要都市を象った8つの彫像が飾られていました。開業当初は、機関車の性能の問題からケーブルで列車を引き上げる方式でしたが、利用者の増加に伴い、1840年代以降、大幅な拡張工事が繰り返されました。

著名な鉄道技師ロバート・スティーブンソンもこの鉄道建設に関わっており、当初はキングス・クロス駅付近への設置案もありましたが、地主の反対により断念されています。ユーストン駅とカムデン・タウンの間には運河を渡る急勾配の区間があり、開業当初はこれを越える機関車が無かった為、1844年までケーブルで列車を牽引していたというエピソードも残されています。

新駅舎：近代化と建築論争

1960年代初頭、老朽化した旧駅舎の建て替えが決定されました。反対運動も起きましたが、駅舎の拡張が可能なのは南側のみという事情から、計画は承認されました。ウェスト・コースト本線の電化工事と並行して進められ、1968年にエリザベス女王臨席のもと、新駅舎が完成しました。

新駅舎は、白タイル、コンクリート、ガラスを基調とした機能的なデザインで、古典主義的な装飾は排除されました。幅197メートルの長く低い構造で、広いコンコース、店舗、食堂などを備えています。しかし、その近代的なデザインは、多くの批判を招きました。「寒々とした」「醜い」「使いにくい」など、辛辣な評価が数多く見られました。著名な詩人ジョン・ベチェマンも旧駅舎の取り壊しに反対し、現代的な保存運動の先駆けとなりました。この論争は、同じイギリス国鉄によって取り壊しが検討されていたセント・パンクラス駅の保存運動へと繋がることになります。

旧駅舎の面影は、ユーストン・ロードのエントランス・ロッジと戦争記念碑、そして駅前に移設されたロバート・スティーブンソンの彫像など僅かに残るのみです。

運行情報：多様な路線網と接続の利便性

ユーストン駅は、アヴァンティ・ウェスト・コースト、ロンドン・ノースウェスタン・レールウェイ、ロンドン・オーバーグラウンド、カレドニアン・スリーパーの4つの鉄道運行会社が利用しており、バーミンガム、マンチェスター、リヴァプール、グラスゴー、エディンバラなど、イギリス各地への路線が接続しています。また、ロンドン地下鉄ユーストン駅（ヴィクトリア線、ノーザン線）と直結しており、ユーストン・スクエア駅（サークル線、ハマースミス＆シティー線、メトロポリタン線）も徒歩圏内にあります。

その他の出来事

1973年にはIRAによる爆弾テロ事件が発生し、駅舎に被害が出ました。また、1990年代の鉄道民営化、2005年の再開発計画発表、2007年の新ターミナル建設発表など、ユーストン駅は現代においても変遷を続けています。

結論：歴史と現代が交錯するロンドンの象徴

ユーストン駅は、歴史的建造物の保存と近代化の両面で、多くの議論を巻き起こしてきた、ロンドンを代表する鉄道駅のひとつです。その歴史と建築、そして現代的な機能性を併せ持つ姿は、ロンドンのダイナミズムを象徴する存在と言えるでしょう。

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