バイオレット (たばこ)

バイオレット

バイオレット（Violet）は、日本たばこ産業（JT）が特定の地域、すなわち沖縄県に向けて製造し、かつて販売していた紙巻きたばこの一銘柄です。この銘柄は、既に市場での販売を終了しています。

その外見上の大きな特徴として、ブランド名である「バイオレット」そのままの鮮やかな紫色を基調としたパッケージが挙げられます。また、手書き風の味わい深い英字ロゴが配されており、フィルター付きのソフトパックとして提供されていました。税法上の分類では、いわゆる「旧3級品」に位置づけられていた製品です。

歴史的背景

バイオレットの歴史は、沖縄が米軍統治下にあった時代にさかのぼります。当時、沖縄域内では琉球煙草、オリエンタル煙草、沖縄煙草産業という三つの民間企業が煙草の販売を担っていました。バイオレットは、これらの企業の一つである琉球煙草の手によって生み出され、1959年に市場に登場しました。

1972年の沖縄本土復帰に伴い、沖縄においても日本本土と同様に煙草専売制度が導入されることとなりました。これに伴い、琉球煙草が製造していたバイオレットは、同じく琉球煙草の製品であった「うるま」（1960年販売開始）とともに、当時の日本専売公社（現在のJT）へと製造・販売の事業が引き継がれました。この際、オリエンタル煙草が製造していた「ハイトーン」や「ロン」といった銘柄も専売公社に引き継がれましたが、これらの銘柄は現在ではいずれも製造が終了しています。

税制と終売

バイオレットが分類されていた「旧3級品」は、たばこ税において特別な軽減措置が設けられていました。しかし、この軽減措置は2016年4月以降、段階的に縮小され、最終的に廃止されることが決定されました。この税制改正は、バイオレットを含む旧3級品銘柄の価格に影響を与え、段階的な値上げが実施されました。最終的に、2018年4月1日からは一箱あたりの価格が350円となりました。

製品パッケージの封緘紙のデザインについては、JTの他の主要銘柄である「ハイライト」と共通のデザインが採用されていました。

度重なる値上げと税制変更の影響も背景に、JTはバイオレットの販売終了を決定しました。2018年12月以降、市場に出回っている在庫が完売した時点で販売を終了することが正式に発表され、長年にわたり沖縄で親しまれてきたバイオレットはその歴史に幕を下ろしました。

関連銘柄としては、同時期に専売公社に引き継がれ、現在もJTから販売されている「うるま」などが挙げられます。また、かつて専売公社に引き継がれたものの現在は終売となった「ハイトーン」や「ロン」も、バイオレットの歴史を語る上で関連性の深い銘柄と言えるでしょう。

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