バクセイ・チャムクロン

バクセイ・チャムクロンは、カンボジアのシェムリアップ州、古都アンコールに位置する小規模なヒンドゥー教寺院です。この寺院はシヴァ神に奉納され、かつてはシヴァ神の黄金像が安置されていました。アンコール・トムの南大門から入場すると、左手にその姿を見ることができます。

歴史的背景

バクセイ・チャムクロンは、10世紀にハルシャヴァルマン1世王によって、父であるヤショーヴァルマン1世に捧げるために建立されました。その後、ラージェンドラヴァルマン2世王の時代に完成しました。寺院の名前である「バクセイ・チャムクロン」は、「翼の下で守る鳥」を意味し、伝説によると、王がアンコールを包囲された際に、巨大な鳥が舞い降りて王を翼の下で守ったと伝えられています。

建築と構造

この寺院は、レンガやラテライトといった耐久性のある素材と、砂岩による装飾が特徴で、これらの素材を組み合わせて建てられた初期の寺院の一つです。当初は、レンガ造りの周壁がピラミッド型の寺院を囲んでいましたが、現在では東側の塔門（ゴープラ）の一部がわずかに残るのみとなっています。

ピラミッド型の基壇は、4段のラテライトで構成されており、基底部の直径は27メートル、頂上部の直径は15メートル、高さは12メートルです。4つの階段が基壇の頂上へと続いています。頂上には、8メートル四方の砂岩の基盤の上に、レンガ造りの中央祠堂が建てられています。祠堂の東側には扉があり、他の3面には偽扉が設けられています。

寺院の外面を覆っていた化粧漆喰（スタッコ）は、その大部分が失われています。しかし、中央の砂岩製のまぐさ（リンテル）には、インドラ神が3つの頭を持つ象アイラーヴァタの上に立つ姿が細かく彫刻されており、その周囲には花綱模様が広がっています。また、小さな扉口の両側には碑文が刻まれており、ジャヤーヴァルマン2世から始まるクメール王朝初期の王たちや、国家の祖先とされる隠者カンブーといった、より古い時代の伝説的な王たちへの献辞と賛辞が記されています。

参照資料

• - Rooney, Dawn F. (2011). Angkor: Cambodia's Wondrous Khmer Temples (6th ed.). Odissey. ISBN 978-962-217-802-1

この寺院は、その歴史的、建築的価値から、アンコール遺跡群の中でも特に重要な遺跡の一つとされています。

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