バクー (空母)

ソ連空母「バクー」からインド空母「ヴィクラマーディティヤ」へ

「バクー」（改名後：アドミラル・ゴルシコフ）は、ソ連海軍が建造したキエフ級航空母艦の4番艦です。他の同型艦とは異なり、新型の艦載機運用を前提に設計されたため、「改キエフ級」と呼ばれることもあります。ソ連崩壊後、インド海軍に売却され、大規模な改修を経て「ヴィクラマーディティヤ」として再就役しました。この艦の歴史は、ソ連海軍の遺産が現代にどのように受け継がれていくかを示す、興味深い事例と言えるでしょう。

起工から就役、そして改名

「バクー」は、1978年12月26日にチェルノモールスキイ造船所で起工されました。1982年3月31日に進水し、1987年12月20日に就役しましたが、就役前の海上テスト中にボイラーに亀裂が入るという事故も経験しています。1988年3月3日に黒海艦隊に編入された後、同年12月には北洋艦隊に編入されました。1990年10月4日、艦名はセルゲイ・ゴルシコフ提督にちなみ、「アドミラル・ゴルシコフ」に改名されました。

幻となったYak-141の搭載

「バクー」は当初、新型の超音速VTOL艦上戦闘機Yak-141の運用を想定して設計されていました。しかし、Yak-141は試験中に事故で大破し、財政難も重なり、開発計画は中止されてしまいました。このことは、バクーのその後の運命に大きな影響を与えることになります。

停滞期とインドへの売却

1991年頃からバクーの活動は不活発になり、1992年から1995年までは岸壁に係留されたままになりました。この間には機関室で火災が発生し、退役した同型艦「キエフ」の部品で修理されるという状況でした。搭載していたYak-38も退役し、ヘリコプターのみの運用となりました。1995年5月には観艦式に参加しましたが、同年7月に予備役となりました。

1996年から、ロシア政府はインドとの売却交渉を開始し、1998年12月に仮契約が結ばれました。2004年1月には本契約が締結され、「バクー」は無償でインドに譲渡されました。ただし、全通甲板空母への改造費用と搭載機MiG-29K等の代金はインドが負担することになりました。セヴマシュ・プレドプリヤーチエで改造工事が開始され、当初は2005年に引き渡される予定でしたが、幾度も延期され、最終的に2013年11月16日にインド海軍に引き渡されました。

インド海軍空母「ヴィクラマーディティヤ」として

改修後、「バクー」はインド海軍艦船として「ヴィクラマーディティヤ」と改名されました。この空母は、インド海軍にとって重要な戦力となっています。

設計の特徴

「バクー」は、他のキエフ級空母とは異なる設計が施されています。特に、次に建造される「アドミラル・クズネツォフ」のテスト艦としての役割も担っており、新型のフェーズドアレイレーダー「マルス・パッサート」や、その他の新型電子機器が搭載されています。

主レーダーには、パッシブ・フェイズド・アレイ式の固定型アンテナが採用されており、レーダーの装備要領は大きく変わりました。主砲は、新型のAK-100 100mm単装速射砲が採用され、P-500艦対艦ミサイルの搭載数も増強されました。また、艦隊防空ミサイルは廃止されたものの、個艦防空ミサイルは3K95「キンジャール」に更新されました。

飛行甲板はYak-141の運用を想定して拡張され、エレベータも拡張されました。試験的にブラスト・デフレクターと着艦拘束装置も装備されましたが、後に撤去されています。

搭載機は、当初Yak-38、Ka-27などが搭載されましたが、インドへの売却後はMiG-29KなどのSTOBAR方式の艦載機が搭載されるようになっています。

まとめ

「バクー」は、ソ連海軍のキエフ級空母として建造されましたが、その後の変遷は非常に複雑です。新型艦載機の開発中止、ソ連崩壊、そしてインドへの売却と大規模改修を経て、全く異なる姿へと生まれ変わりました。この艦の歴史は、技術的な進歩や国際情勢の変化が、軍艦の運命に大きく影響を与えることを示しています。

外部リンク

アドミラル・ゴルシコフ級航空重巡洋艦

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