キエフ級航空母艦

キエフ級航空母艦

キエフ級航空母艦（Kiev-class aircraft carrier）は、ソ連海軍によって運用されていた航空母艦のクラスであり、正式には「航空巡洋艦」として分類されています。この艦級は、1143型という計画番号と「クレチェト」という名前（ロシア語で「ハヤブサ」を意味する）を持ち、ソ連における重要な海軍資産の一部でした。

背景と開発

1960年代、ソ連海軍はNATO軍による潜水艦の脅威に対応するため、対潜戦闘能力の向上を図りました。このような環境の中、かつての1123型対潜巡洋艦の成功を受けて、新型艦の建造が検討されました。しかし、当時の海軍総司令官であるセルゲイ・ゴルシコフ元帥は、試作の垂直離着陸機Yak-36の性能に感銘を受け、次世代の艦にはこの機体を搭載することを決定しました。その結果、1123.3型の建造計画は中止され、「キエフ」と呼ばれる新しい1143型の建造が始まりました。

1143型は、1973年に竣工予定であり、各種の設計案が検討されました。その中から選ばれたのは、発艦支援設備を持たないV/STOL空母としての漸進的な設計でした。最終的に1969年には建造計画が正式に承認され、1971年にキエフの建造が始まりました。

設計と構造

キエフ級は、アイランド構造の上部構造物を持ち、全通飛行甲板を採用しています。艦底と舷側は二重構造であり、抗堪性が重視されました。また、レーダーに対するステルス性も考慮されています。兵装や搭載機の容量を最大限活用し、当時の他国の航空母艦とは一線を画する設計が施されました。

建造された艦は、強力な兵装を備えており、艦対艦ミサイルや対潜武器、対空ミサイルを搭載しています。このため、単なる航空母艦ではなく、艦隊防空能力や対潜戦能力にも優れた性能を持った艦艇として位置づけられました。

装備と運用

キエフ級航空母艦は、リアルタイムの戦術情報を処理するための指揮支援システムを搭載し、主レーダーやソナーも装備されています。特に対艦ミサイルの運用に関しては、P-500「バザーリト」を搭載し、艦隊攻撃能力も備えています。また、飛行甲板はアングルド・デッキ式であり、VTOL機の運用を想定していますが、発艦支援設備は装備されていませんでした。

搭載機数は標準で22機、最大では36機に達したこともあります。主にYak-38という艦上攻撃機が運用され、敵戦闘機に対抗する役割を果たしました。しかし、航続距離や兵装搭載量の限界から、任務の達成には課題があったことも知られています。また、他の艦艇とは違い、強力な火力を有し水中や空中での作戦を自由に展開できる点がキエフ級の大きな特長と言えるでしょう。

結論

キエフ級航空母艦は、ソ連の海軍にとって重要な戦力であり、現代的な航空巡洋艦としての役割を果たしました。航行能力や多様な装備によって、遠隔海域での戦闘能力を強化し、海軍の戦略を支える一翼を担ったのです。近代での軽空母の先駆けとして、航空母艦の設計や運用に大きな影響を与えました。

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