バサラブ家

バサラブ家：ワラキア公国を築いた一族

バサラブ家は、ワラキア公国の成立に大きく貢献し、歴代のワラキア公を輩出した名門です。モルダヴィア公を輩出したボグダン＝ムシャト家とも血縁関係にありました。ワラキア公国は選挙君主制を採用しており、公はバサラブ家の男子からボヤールによって選出されていました。

分裂と家督争い

1436年にアレクサンドル1世アルデアが亡くなると、バサラブ家は有力な分家であるダネシュティ家とドラクレシュティ家が互いに正当性を主張し、分裂します。ダネシュティ家の男系子孫が絶えた後は、クラヨヴェシュティ家が台頭し、ネアゴエ・バサラブ、マテイ・バサラブ、コンスタンティン・シェルバン、シェルバン・カンタクジノ、コンスタンティン・ブルンコヴェアヌらが公位を巡って争いました。

著名なワラキア公

バサラブ家からは、数々の著名なワラキア公が輩出されています。

ミルチャ1世
ダン2世
ヴラド2世
ヴラド3世（ヴラド・ツェペシュ）：串刺し公として知られる
ヴラド僧公
ラドゥ4世
アフマツィのラドゥ

起源

バサラブ家の名前は、ハンガリー王国からのワラキア公国独立を主導したバサラブ1世に由来します。その語源については、クマン語またはペチェネグ語などのテュルク語族の言語に由来し、「父なる支配者」を意味するという説があります。Basarは「統治する」という動詞の現在分詞であり、キプチャク語群に共通する語です。歴史家のニコラ・イオルガは、名前の後半部分である「-aba」（父）はテルテロバ、アスラナパ、ウルソバなど、多くのクマン人の名前に見られる名誉称号であると主張しました。

バサラブ1世の父であるトコメリウスも、13世紀のクマン人やタタール人の間で一般的なToq-tämirという名前を持っていました。ロシアの年代記には、1295年頃にクリミアにモンゴル帝国の王子トクトマーが存在したと記録されており、トコメリウスはこの人物と同一視されることもあります。

ただし、バサラブ家の名前の起源をクマン語またはペチェネグ語に求める説は、あくまで推測であり、歴史家の間でも議論が分かれています。同時代の人々はバサラブ家をヴラフ人と見なしており、ハンガリー王カーロイ1世はバサラブ1世を「Bazarab infidelis Olacus noster（バサラブ、危険極まるヴラフ人）」と呼んでいます。

バサラブ家の系譜

バサラブ家の詳細な系譜については、参考文献や外部リンクをご参照ください。

遺産

バサラブ家の名は、現在のモルドバ共和国およびウクライナの一部を指すベッサラビアや、ルーマニアのバサラビ、モルドバ共和国のバサラベアスカ、ブルガリアのバサルボヴォなど、各地の地名に残っています。

さらに、イギリス女王エリザベス2世は、ハンガリーの伯爵令嬢レーデイ・クラウディアを通じてスタンカ・オブ・バサラブの子孫です。レーデイ・クラウディアの孫であるヴィクトリア・メアリーは、エリザベス2世の祖父ジョージ5世の妃となりました。また、エリザベス2世は串刺し公として知られるヴラド3世（ヴラド・ツェペシュ）の15代目の子孫にあたります。

参考文献

Vasary, Istvan, Cumans and Tatars, Cambridge University Press, 2005, pp. 149–155

外部リンク

Basarab genealogy
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