キプチャク語群

キプチャク語群：広大なユーラシアに広がるテュルク諸語

キプチャク語群は、テュルク語族の共通テュルク語派に属する言語群です。その分布域は非常に広く、東ヨーロッパから中央アジア、さらには中国北部まで及びます。現在、2500万人以上の人々によって話されており、ユーラシア大陸における重要な言語集団の一つと言えるでしょう。

キプチャク語群の特徴

キプチャク語群は、多くの共通の特徴を共有しています。これらの特徴の中には、他のテュルク諸語と共通する部分もあれば、キプチャク語群に特有のものもあります。

他のテュルク諸語との共通点:

古テュルク語におけるd, t音の/j/への変化：例えば、古テュルク語のhadaq（足）は、キプチャク語ではajagとなります。
語頭のh音の脱落：多くの場合、語頭のh音は消失します。

キプチャク語群に特有の言語特徴:

広円唇母音の母音調和：例えば、olar（彼ら）とolor（彼ら、文脈による変化）のような対立が見られます。これは、母音の円唇性によって語形が変化する現象です。
語頭の/j/音の子音強化：多くの場合、語頭の/j/音は歯擦音に変化します。例えば、/jetti/（7）はʒettiとなります。
語末の/ɡ/音と/b/音の二重母音化：語末の/ɡ/音と/b/音は、二重母音に変化することがあります。例えば、/taɡ/（山）はtaw、/sub/（水）はsuwとなります。

キプチャク語群の分類

キプチャク語群は、地理的な分布と共有する言語特徴に基づいて、主に4つの小グループに分類されます。

1. キプチャク・ブルガール語群（ウラル・カスピ語群）：バシキール語、タタール語などが含まれます。このグループの言語は、ウラル山脈とカスピ海の周辺地域で話されています。
2. キプチャク・クマン語群（ポント・カスピ語群）：カラチャイ・バルカル語、クムイク語、カライム語、クリムチャク語、ウルム語、クリミア・タタール語などが含まれます。黒海北岸からカスピ海沿岸にかけて分布しています。
3. キプチャク・ノガイ語群（アラル・カスピ語群）：ノガイ語、カラカルパク語、カザフ語などが含まれます。アラル海とカスピ海の周辺地域に分布しています。
4. キルギス・キプチャク語群：キルギス語、南アルタイ語などが含まれます。中央アジア、特にキルギス共和国周辺で話されています。

これらの分類は、言語学的な研究の進展に伴い、今後変更される可能性もあります。

参考文献

Johanson, Lars and Csató, Éva Ágnes (1998). The Turkic Languages. London: Routledge. ISBN 0-415-08200-5.
Menges, Karl H. (1995). The Turkic Languages and Peoples* (2nd ed.). Wiesbaden: Harrassowitz. ISBN 3-447-03533-1.

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