バシケーン

バシケーン：中山大障害を制した一匹狼

2010年中山大障害の優勝馬、バシケーン。その競走馬人生は、平地競走での苦戦から始まり、障害競走への転向によって華々しい成功を収めるという、ドラマチックな物語でした。

平地競走時代、バシケーンは8戦全敗。常に二桁人気の低評価に甘んじ、勝ち馬から大きく離された着順が続きました。最下位に4回沈んだことも。しかし、この経験が、後の障害競走での活躍の礎を築いたと言えるでしょう。

3歳春、バシケーンは平地競走への道を諦め、障害競走へと転向します。転向後、地道な努力を重ね、入障11戦目で初勝利を挙げます。その後も着実に経験を積み重ね、2010年12月、中山大障害への挑戦権を獲得しました。

中山大障害では、実績豊富なメルシーエイタイムやトーワベガなど、強豪馬がひしめく中、バシケーンは単勝10番人気と低評価でした。キャリアこそ豊富でしたが、重賞での入着実績はなく、勝利への期待は低かったのです。しかし、担当の高橋義博調教師は、バシケーンの潜在能力を見抜き、その成長を信じていました。

迎えた中山大障害当日。蓑島騎手は、バシケーンの折り合いを重視し、後方待機策を選択しました。レース終盤、最終障害を飛越すると、バシケーンは一気に先行馬を抜き去り、見事優勝。重賞初制覇、そしてJ-GI制覇という快挙を成し遂げました。この勝利は、高橋義博調教師にとって開業12年目にして初の重賞勝利、シルクジャスティス産駒にとっても初のJRA重賞勝利という、歴史的快挙でもありました。その年のJRA賞最優秀障害馬にも選出されています。

2011年、バシケーンは春麗ジャンプステークスから始動しましたが、3着に敗退。続く中山グランドジャンプを目指していましたが、左前浅屈腱炎を発症し、長期休養を余儀なくされました。

1年1カ月ぶりの復帰戦となった2012年3月10日の阪神スプリングジャンプでは6着。その後の中山グランドジャンプでは12着と、以前の輝きを取り戻すことができませんでした。福島ジャンプステークスでは4着、東京ハイジャンプでは10着と、徐々に力を落としていき、同年10月14日の東京ハイジャンプを最後に現役を引退。11月23日には競走馬登録が抹消されました。

引退後は、福島県田村市の鎌田牧場で乗馬になる予定でしたが、最終的には相馬市の相馬中村神社に繋養されることになりました。同神社では、相馬野馬追に出場する神馬として活躍しました。2018年には、引退名馬繋養展示事業の助成対象馬となり、同年7月には相馬市のナインスターステーブルに移りました。

バシケーンは、平地競走時代の苦戦を乗り越え、障害競走で華々しい成功を収めた、まさに努力の結晶と言える競走馬でした。そのドラマチックな人生は、多くの競馬ファンに感動と勇気を与え続けています。彼の功績は、これからも語り継がれていくでしょう。

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