バスター・ジャングル作戦

冷戦の最中、核兵器の開発競争が激化していた1950年代初頭、アメリカ合衆国はネバダ核実験場を舞台に一連の核実験を展開しました。その中でも特に注目される作戦の一つが、1951年に実行された「バスター・ジャングル作戦」（Operation Buster–Jangle）です。

作戦の概要と特徴

バスター・ジャングル作戦は、合計で7回の核爆発を伴う実験シリーズでした。これらの実験のうち、6回は大気圏内で実施され、残りの1回は地下で行われました。この作戦の特筆すべき点は、アメリカ国防総省（Department of Defense）と、原子爆弾開発の中心的な役割を担ったロスアラモス国立研究所（Los Alamos Scientific Laboratory）が初めて合同で指揮を執った実験であることです。この合同体制は、軍事的な要求と科学技術的な専門知識をより密接に連携させるための新しい試みとして位置づけられます。

実験内容と「掘削」の試み

本核実験シリーズの主な目的は、核兵器の様々な条件下での挙動や、標的に対する効果を詳細に検証することにありました。実験ごとに異なる種類の核爆弾や起爆方法が用いられ、その影響が多角的に評価されました。特に、シリーズの最後の2回の実験では、比較的小規模な核出力を持つ原子爆弾が使用されました。これらの実験の目的は、核爆発が地面に与える影響、具体的には地面を掘削する能力やクレーターを形成する効果を評価することにありました。これは、将来的に核エネルギーを大規模な土木工事や資源開発に応用する可能性（いわゆる「平和的核爆発」）を探る初期の試みとも関連しており、その後のプロジェクト・プラウシェアなどへと繋がる萌芽を含んでいました。

「デザート・ロック」演習との連携

バスター・ジャングル作戦の期間中、それに並行して一連の軍事演習「デザート・ロック」（Desert Rock）が実施されました。「デザート・ロックI」、「デザート・ロックII」、「デザート・ロックIII」と名付けられたこれらの演習には、約6,500名のアメリカ軍兵士が投入されました。これらの演習の目的は、戦場における核兵器の使用を想定し、核爆発の状況下での部隊の行動、装備の耐久性、そして兵士の心理的・生理的な影響などを確認することでした。しかし、これらの演習に参加した兵士たちは、十分な放射線防護措置が講じられないまま、至近距離で核爆発に晒されました。結果として、彼らは高レベルの放射線に被曝し、「アトミック・ベテラン」（Atomic Veterans）として知られるように、後年、様々な健康被害（癌など）に苦しむことになりました。これは、初期の核実験における人体実験的な側面や、その後の補償問題を巡る歴史的な課題として、今日まで議論の対象となっています。

歴史的文脈

バスター・ジャングル作戦は、アメリカが太平洋のビキニ環礁などで大規模な核実験（クロスロード作戦、キャッスル作戦など）を実施していた時期と、ネバダ核実験場での大陸内実験を本格化させていた時期の間に位置します。具体的には、1951年春に太平洋で行われた「グリーンハウス作戦」（Operation Greenhouse）の後を受けて展開され、1952年春にネバダ核実験場で実施された「タンブラー・スナッパー作戦」（Operation Tumbler–Snapper）へと繋がっていきます。これらの連続する作戦を通じて、アメリカは核兵器の小型化、軽量化、そして戦術的な運用能力の向上を目指し、核抑止戦略の構築を急ピッチで進めていました。

結論

バスター・ジャングル作戦は、技術的には国防総省と科学研究所の連携という点で新しい試みを含み、また核エネルギーの工学的利用の可能性を模索したという側面を持ちます。一方で、それに連携して実施された「デザート・ロック」演習における兵士の被曝問題は、核時代の負の遺産として重要な教訓を残しました。この作戦は、核兵器開発の歴史において、技術的な進歩と同時に、その倫理的、人道的な問題点が顕在化した事例として記憶されるべき出来事と言えます。

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