バセット・ローク

バセット・ローク：模型史に名を刻んだ英国の巨匠

バセット・ローク社は、1898年または1899年、ウェンマン・ジョセフ・バセットロークによってイングランドのノーザンプトンで創業された模型メーカーです。鉄道模型、船舶模型、そして組み立てキットを製造・販売し、模型業界に革命的な変化をもたらしました。

スケールの概念と技術革新

それまでの模型は、おもちゃのような曖昧なスケールが主流でしたが、バセット・ローク社は、精密なスケールモデルの概念を初めて導入しました。この革新的な取り組みは、よりリアルな模型を求めていた愛好家たちを魅了し、同社の成功を大きく後押ししました。

初期の製品は、実物と同じように燃料を燃焼させ、蒸気で動くライブスチーム機関車が中心でした。しかし、その後は子供でも扱えるゼンマイ式や電気式（交流3線式）の模型も開発・販売するようになり、幅広い層の顧客を獲得しました。

時代が進むにつれ、船舶模型が主力製品となり、かつての鉄道模型愛好家には物足りなさを感じる変化もありました。しかし、その精密な造りと高い品質は、時代を超えて高い評価を受け続けています。現在でも、ACETRAIN社などから復刻版が販売されるなど、その人気は衰えることを知りません。

国際的な影響と高い評価

バセット・ローク社は、当時の新興工業国であったドイツのメルクリンやビングといったメーカーにも技術的な影響を与え、これらのメーカーの発展に貢献しました。当時、上流階級を中心に販売されていた同社の製品は、現在でもオークションで高値で取引されることがあり、その妥協のない精巧な作りは、時代を超えて愛され続けています。

日本国内でも、長野県軽井沢のトイ・ミュージアムや栃木県壬生町のおもちゃのまちバンダイミュージアムなどで、バセット・ローク社の製品を見ることができます。

歴史と製品群

バセット・ローク社は、ノーザンプトンの他の模型メーカー、トワイニング・モデルズやウイントリガムズと同様に、製造と販売を自社で行っていました。第一次世界大戦前後の時代には、同社のカタログには「B M C」という略称が使用され、これが後に混乱を招くこととなります。インターネット上では、この「B M C」を「Birmingham Metal Company」や「Brighten Metal Company」と誤解するケースが見られます。

バセット・ローク社とB M C社は協業し、1885年から1916年にかけて、タグボート、輸送船、ロイヤルヨットなどを含むイギリス海軍の艦船模型を多数制作しました。これらの模型はホーローキャストの鉛製で、船体にはワイヤーマストが取り付けられていました。精密に塗装され、番号が付けられたこれらの模型は、セット販売され、紙製の旗が付属していました。スケールは1インチが1800インチに相当するもので、これは後に標準的なスケールとなるでしょう。

第一次世界大戦中は、おそらく金属の配給制限のため、このシリーズの生産は中止されました。しかし、後にこれらの模型の複製品がインターネット上で販売されています。オリジナルとの識別には、ホーローキャスト製であるかどうかが重要なポイントとなります。

第二次世界大戦中には、木とワイヤー製の船舶模型を1/1250スケールで軍需契約として製造していました。初期のB M C社の模型は非常に精密で、現在でも高値で取引されています。

1905年には、15インチゲージのライブスチーム機関車を発売、その後2番ゲージ、1番ゲージ、Oゲージへと展開しました。1905年に発売された最初の15インチゲージの蒸気機関車「Little Giant」は、Eaton Hall鉄道で試運転されました。バセット・ローク社は、注文製作による鉄道レイアウトの制作も行なっており、その中の一つであるイングランドのベコンスコット模型村は現在も現存しています。

衰退と復活

バセット・ローク社の衰退は、1950年代後半から始まりました。安価な類似商品が登場したこと、そして技術玩具への関心の低下などが原因として挙げられます。1964年には小売販売を中止し、1965年に廃業しました。しかし、1966年に買収され、1993年にはショートランのホワイトメタル模型でブランドが復活、その後1996年にコーギー社に買収され、現在ではホーンビー社の傘下でブランドが存続しています。

創業者：ウェンマン・ジョセフ・バセットローク

バセット・ローク社の創業者、ウェンマン・ジョセフ・バセットローク(1877-1953)は、ノーザンプトンのボイラー工の息子として生まれました。彼の情熱と技術によって生み出された精密な模型は、現在でも人々を魅了し続けています。

バセット・ローク社は、その精密な技術と革新的な精神で、模型業界に大きな足跡を残しました。その歴史と製品は、模型愛好家たちにとって永遠の憧れの対象であり続けるでしょう。

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