バチカン市国 (世界遺産)

世界遺産としてのバチカン市国

バチカン市国は、イタリアのローマに位置する独立国家であり、その国土全体がユネスコの世界遺産として登録されています。カトリック教会の総本山として知られ、サン・ピエトロ大聖堂やバチカン宮殿など、歴史的、文化的にも非常に重要な建造物が数多く存在します。

概要

バチカン市国は、テベレ川の西側に位置し、カトリック教会の中心地として世界中から多くの信者や観光客が訪れます。世界遺産としては、バチカン市国全域が登録されており、イタリアの[[世界遺産]]であるローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂と隣接しています。

主な構造物

イタリア・バロック様式の代表的な建築物であり、使徒ペトロの墓の上に建てられたとされています。初代の聖堂はコンスタンティヌス帝の命により324年に建設されましたが、16世紀に現在の聖堂が再建されました。ラファエロやミケランジェロといった著名な芸術家が建築に関わり、1626年に献堂式が行われました。

大聖堂の総面積は約22,000m²で、6万人以上を収容可能です。ミケランジェロが設計したとされる高さ132.5mの巨大なクーポラ（円蓋）が特徴で、その直下にはベルニーニ作の大天蓋（バルダッキーノ）が設置されています。

サン・ピエトロ広場は、284本のドーリア式円柱が連なる回廊で囲まれており、回廊の上にはベルニーニの弟子たちが制作した140体の聖人像が飾られています。広場中央には、古代エジプトから運ばれたオベリスクが立っています。

聖堂内には、ミケランジェロの初期の傑作であるピエタ像が安置されています。この作品は、十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアを表現しており、その美しさから過去に破壊行為が試みられたこともあり、現在ではガラスケースで保護されています。

バチカン宮殿

バチカン宮殿は、サン・ピエトロ大聖堂と繋がっており、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニが設計した大階段が有名です。内部には、ラファエロとその弟子たちが手がけたフレスコ画で飾られた「ラファエロの間」があり、ラファエロの代表作『アテナイの学堂』もこの部屋にあります。また、フラ・アンジェリコの壁画で装飾されたニコラウス5世礼拝堂も重要な見どころです。

教皇は、バチカン宮殿滞在中の毎週日曜日には、執務室から姿を現し、サン・ピエトロ広場に集まった信者と共に祈りを捧げ、祝福を与えています。

システィーナ礼拝堂

バチカン宮殿とバチカン美術館に隣接するシスティーナ礼拝堂は、シクストゥス4世の命により1475年に建設が始まりました。ミケランジェロが描いた大天井画『創世記』と壁画『最後の審判』があまりにも有名で、多くの観光客が訪れます。また、教皇を選出するコンクラーヴェの会場としても使用されています。

バチカン美術館

バチカン美術館は、バチカン宮殿の北側に位置する美術館、図書館など20以上の施設の総称です。バチカン宮殿やシスティーナ礼拝堂を含めてバチカン美術館と呼ぶこともあります。所蔵品の中心は、ユリウス2世の彫刻コレクションであり、キリスト教美術だけでなく、古代ギリシャや古代エジプトのコレクションも豊富です。

登録基準

バチカン市国は、世界遺産として以下の基準を満たして登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作: サン・ピエトロ大聖堂やシスティーナ礼拝堂などの建築物、ミケランジェロやラファエロなどの芸術作品は、人類の創造性を象徴する傑作とされています。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの: バチカン市国は、カトリック教会の中心地として、建築、芸術、都市計画に大きな影響を与え、様々な文化圏の価値観の交流を促進してきました。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例: バチカン市国には、ルネサンスやバロック様式を代表する建築物が多く存在し、これらの建築物群は、人類の歴史上重要な時代を象徴しています。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの: バチカン市国は、カトリック教会の中心地として、宗教、信仰、芸術といった普遍的な価値と深く結びついており、その歴史的な意義は非常に大きいものです。