バナナ共和国

バナナ共和国とは

「バナナ共和国」とは、バナナをはじめとする一次産品の輸出に経済を依存し、主にアメリカ合衆国などの外国資本によって政治・経済がコントロールされている政情不安定な小国を指す政治学用語です。この言葉は、特に中南米の小国に対して使われることが多いですが、広義には同様の状況にある他地域の国家に対しても用いられます。

特徴

バナナ共和国は、社会の階層化が著しく、大多数の貧困労働者層と、政治・経済・軍部を牛耳る少数の支配者層という構造を特徴とします。この支配者層は、自国の一次産業を支配し、経済を搾取することで富を蓄積します。そのため、国内には著しい経済格差が生じ、社会不安が蔓延しやすい状況にあります。

この言葉は、侮蔑的なニュアンスを強く含んでおり、国家の主権や国民の自立性を否定するニュアンスで使用されることがほとんどです。

歴史

「バナナ共和国」という言葉の起源は、20世紀初頭の中米に遡ります。当時、ユナイテッド・フルーツ、ドール、デルモンテといったアメリカ合衆国の農業資本企業が、中米各国に広大なプランテーションを建設し、バナナの生産と輸出を独占しました。

これらの企業は、莫大な資金力を背景に各国の政治に深く関与し、自らに有利な政策を推し進めました。例えば、バナナ輸送に必要な鉄道や港湾などのインフラを自ら整備する一方で、現地の支配者層と結託し、労働者の権利を無視したり、時には政権を転覆させたりもしました。

その結果、これらの国々は、経済的に外国資本に従属し、自立した発展を遂げることができなくなりました。最初に「バナナ共和国」と呼ばれたホンジュラスでは、ユナイテッド・フルーツ社の経理部長が後に大統領に就任するなど、企業の政治支配が露骨に現れていました。

功罪

バナナプランテーションは、熱帯気候の平野部に建設されることが多く、その立地条件から、首都のある山間部や高地とは異なる経済圏を形成しました。バナナの輸出には、港湾へのアクセスが不可欠であり、プランテーションの周辺には独自の経済圏が形成され、スペイン統治時代からの中心地とは異なる地方の経済発展を促しました。しかし、同時に、これらの地域は、首都周辺の政治勢力よりも、外国の農業企業の影響力が強くなり、結果として、搾取の温床となることが多くありました。

クーデター

冷戦時代には、アメリカ合衆国政府やアメリカ企業が、自らに不利な政権を武力で転覆させることもありました。1954年のグアテマラのクーデター（PBSUCCESS作戦）は、農地解放を訴える左翼政権に対し、ユナイテッド・フルーツ社とアメリカ中央情報局が共謀して起こした事件として知られています。

その他の事例

近年では、2021年1月6日のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件に関し、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が「これはバナナ共和国で起こるような事件」と批判したように、政治的な混乱や民主主義の危機を表す言葉としても使われています。

関連用語

バナナ・リパブリック: アパレルメーカー。その名称の政治的意味合いから批判を浴びることもあります。
モンロー主義: アメリカ合衆国がラテンアメリカ地域に対する支配を正当化した外交政策。
棍棒外交: アメリカ合衆国が、武力や経済力を用いて他国に圧力をかける外交政策。
バナナ戦争: 20世紀初頭に中米で発生した、アメリカ合衆国の介入による紛争。
モノカルチャー: 特定の一次産品の生産に依存した経済構造。
衛星国: 大国に依存し、その影響下にある国。
植民地: 他国の支配下にある地域。
ウディ・アレンのバナナ: 中南米の独裁国家を舞台にした1971年のアメリカ映画。
フンタ: 架空の「バナナ共和国」を舞台にしたボードシミュレーションゲーム。
トロピコ: PC用箱庭ゲーム。腐敗した独裁者として国家を経営するシミュレーション。


バナナ共和国という言葉は、単なる地理的な分類ではなく、政治的、経済的な構造がもたらす不均衡と不安定さを表す言葉として、現代でも用いられています。

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