バプテストの継承性

バプテストの継承性：途絶えることなき信仰の連鎖？

バプテストの継承性（Baptist successionism）とは、現代のバプテスト教会が、キリスト教初期から続く歴史的な流れの中に位置づけられるという考え方です。別名「バプテストの永続性」や「血まみれの道」とも呼ばれ、長らくバプテスト教徒の間で信じられてきました。この理論は、現代のバプテスト教会が、時代を超えて同じ信仰を保ちながら、古代教会から連綿と繋がっているという主張に基づいています。ただし、どの時代も「バプテスト」という名称で呼ばれていたわけではありません。

この理論は、モンタノス派、パウロ学派、カタリ派、ヴァルド派、アルビ派、そしてアナバプテストなど、歴史的に幼児洗礼に反対したグループを、現代のバプテスト教会の先駆者として捉えます。これらのグループは、迫害の歴史を共有し、バプテストの継承性を示す証拠として捉えられてきました。この歴史観は、『殉教者の鑑』などの文献にも記録されています。

初期の理論と主張者

バプテストの継承性の明確な理論は、早くも1652年にジョン・スピットルハウスによって提唱されました。彼の著書は、使徒時代から現代に至る信仰の継承を証明しようとするものでした。

バプテスト継承論の歴史家は、ローマ・カトリックやプロテスタントの歴史家・弁護者の記述も参考にしています。例えば、オランダ改革派の神学者、アナエオス・ユパイジとイザーク・ヨハンネス・デルモウトは、アナバプテストやメノナイトを、ワルドー派の流れを汲むものとして捉え、バプテストが「使徒時代から継続された、最古で唯一のキリスト教教派」である可能性を示唆しています。

バプテスト継承論を提唱した著名な人物には、ジョン・T・クリスチャン、J・M・キャロル、トーマス・クロスビー、G・H・オーチャード、J・M・クランプ、ウィリアム・キャスカート、アダム・テイラー、D・B・レイなどがいます。J・M・キャロルの『血まみれの道』は、この理論を広く一般に知らしめた重要な著作です。

ジェシー・マーサーは、1811年の回状の中で、バプテストの継承性を根拠に幼児洗礼を拒否する立場を明確にしています。彼はカトリックの使徒継承を歴史的に検証不可能とし、使徒継承の有無が信仰の正しさとは無関係であると主張しました。

著名な英国のバプテスト説教者チャールズ・スポルジョンもバプテストの永続性を擁護し、「バプテストはキリスト教の原型であり、宗教改革によって生まれたわけではない。使徒たちから続く途絶えることのない連鎖を保持している」と述べています。

現代における変化と論争

19世紀後半以降、バプテストの歴史研究は、継承論から離れ、17世紀の英国分離主義を重視する方向にシフトしていきました。この変化は、1898年にウィリアム・ホワイトシットが南部バプテスト教会神学校を辞任する騒動を引き起こすほど大きな論争を巻き起こしました。しかし、彼の新しい見解はその後も神学校で教えられ続けました。

バプテストの継承性は、現在でも一部のバプテスト教派、特にランドマーク派の間で支持されていますが、その妥当性については様々な議論が継続されています。この理論は、ローマ・カトリック、東方正教会、聖公会などの使徒継承説、モルモン教の復古主義、ストーン＝キャンベルの復帰運動などとも対比的に理解することができます。

関連事項

ドナトゥス派
分離主義
バプテスト教会
浸礼（バプテスマ）
アナバプテスト（再洗礼派）
ランドマーク・バプテスト（ランドマーク主義）
血まみれの道
ジェイムズ・ミルトン・キャロル
チャールズ・スポルジョン
使徒継承
教会のしるし
真理の回復
* 幼児洗礼

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