血まみれの道

『血まみれの道』：アナバプテストの系譜とランドマーク派バプテストの主張

『血まみれの道』（Trail of Blood）は、ランドマーク・バプテストの重要な著作物です。本書は、アナバプテストこそがキリスト教において最も古い教派であり、その正統な継承者としてランドマーク派バプテストが存在すると主張しています。彼らは、自らをプロテスタントとはみなしていません。

本書の中心となるのは、歴史における「血のランドマーク（the landmarks or earmarks）」をたどり、アナバプテストの系譜を明らかにすることです。著者は、カトリック教会や使徒的教会とは異なる歴史的流れを強調し、暗黒時代においても、幼児洗礼を拒否し、聖書に基づいた信仰を守り続けた真のクリスチャンが常に存在したと論じています。

具体的には、ドナティスト、パウリキウス派、アルビ派、ヴァルド派といった歴史的キリスト教グループを、アナバプテストの流れの中に位置づけています。これらのグループは、カトリック教会の支配から独立し、独自の信仰を堅持したとされています。著者は、暗黒時代を通して、カトリック教会とは異なる教会が継続的に存在していたことを強調することで、アナバプテストの古い歴史と正統性を主張しています。

ランドマーク派バプテストの根本教理

『血まみれの道』では、ランドマーク派バプテストの根本教理が示されています。それは、イエス・キリストによって設立された霊的な教会、聖書に基づく礼典（バプテスマと主の晩餐）、そして教会のしもべとしての教役者という構成要素で成り立っています。

この教会は純粋な会衆制に基づいており、法と教理は新約聖書のみを基準とします。教会員は、浸礼によるバプテスマを受けて、新約聖書に忠実である者のみで構成されます。また、政教分離と完全な宗教の自由を強く主張し、教会の独立性を重視しています。

カトリック教会とキリスト教の歴史における対比

本書は、カトリック教会の歴史と、著者が考える真のクリスチャンの歴史を対比的に示すことで、アナバプテストの独自性を強調しています。

カトリック教会の歴史においては、3世紀の幼児洗礼の導入、4世紀の教会と国家の合同、5世紀の教皇制確立とマリア崇拝、そして8世紀以降の聖人崇拝や偶像崇拝などが問題視されています。また、9世紀の東西教会分裂、14世紀のジョン・ウィクリフ、15世紀のジロラモ・サヴォナローラといった宗教改革の先駆者たちの存在も言及されています。

対照的に、著者は、1世紀のイエス・キリストによる教会設立から始まり、モンタノス派、ドナティスト、パウロ派、ヴァルド派、そして15世紀のバプテストへと続く歴史の流れを、真のキリスト教の系譜として提示しています。

まとめ

『血まみれの道』は、ランドマーク派バプテストの信仰体系を理解する上で重要な著作です。歴史的な考察に基づき、アナバプテストの正統性を主張し、聖書に忠実な信仰と教会の独立性を重視する彼らの思想は、現代においても重要な意味を持つと言えるでしょう。本書は、キリスト教の歴史に対する独自の解釈を示しており、歴史研究の観点からも興味深い内容を含んでいます。ただし、本書の主張は、他のキリスト教諸派や歴史学者の間で必ずしも広く受け入れられているわけではありません。様々な視点から歴史的事実を検討し、多角的に理解することが重要です。

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