バラ亜科

バラ亜科：バラ、イチゴ、キイチゴの仲間たち

バラ亜科（Rosoideae）は、バラ科を構成する主要な亜科の一つです。世界中の温帯から寒帯地域に広く分布し、草本や低木など、多様な生育形態を示す植物群が含まれています。古くから親しまれてきたバラやイチゴ、キイチゴといった植物も、このバラ亜科に属しています。

バラ亜科に含まれる植物は、一般的に、複数の離れた心皮を持ち、子房上位の花を咲かせます。それぞれの心皮は独立して発達し、果実となります。果実のタイプは多様で、キイチゴのような小核果や、イチゴのような痩果などが見られます。また、イチゴのように花托が肥大して偽果を形成するものや、バラのように萼が肥大して偽果となるものもあります。これらの多様な果実の形態は、種子散布戦略の多様性を反映していると考えられます。

分類体系の変遷

従来、バラ科はシモツケ亜科、バラ亜科、ナシ亜科、サクラ亜科の4つの亜科に分類されてきました。しかし、近年の分子系統学的研究の進展により、この分類体系は見直されています。最新の研究に基づくと、バラ科はバラ亜科、チョウノスケソウ亜科、シモツケ亜科の3亜科に分類されることが示されています。この変更に伴い、以前はバラ亜科に分類されていたチョウノスケソウ属はチョウノスケソウ亜科に、ヤマブキ属とシロヤマブキ属はシモツケ亜科に再分類されました。これらの分類の見直しは、植物の進化と系統関係をより正確に反映した結果と言えるでしょう。

代表的な属と種

バラ亜科には、数多くの属と種が含まれており、その多様性は著しいものです。以下に、代表的な属とその特徴を挙げ、いくつかの種について説明します。

キンミズヒキ属 (Agrimonia L.): 黄色い小花を穂状に付ける植物で、薬用にも利用されてきました。
ハゴロモグサ属 (Alchemilla L.): 葉が特徴的な、独特の形状を持つ植物です。
オランダイチゴ属（イチゴ属, フラガリア属） (Fragaria L.): 私たちが食用とするイチゴの仲間です。ノウゴウイチゴなど、様々な種があります。
ダイコンソウ属 (Geum L.): ダイコンソウなど、様々な種を含む属です。
キジムシロ属 (Potentilla L.): キジムシロやヘビイチゴなど、身近な野草が多く含まれます。
バラ属 (Rosa L.): ノイバラやハマナスなど、様々な種類のバラが含まれます。
キイチゴ属 (Rubus L.): クマイチゴなど、様々な種類のキイチゴが含まれます。
ワレモコウ属 (Sanguisorba L.): ワレモコウやカライトソウなど、独特の花を咲かせる植物です。

これらの属以外にも、エゾツルキンバイ属、クロバナロウゲ属、キンロバイ属、シモツケソウ属、タテヤマキンバイ属、コキンバイ属など、多くの属がバラ亜科に含まれています。コキンバイ属は、分類によってはダイコンソウ属に含める場合もあります。

まとめ

バラ亜科は、バラ科の中で最も多様性に富む亜科の一つであり、バラ、イチゴ、キイチゴなど、私たちの生活に密着した多くの植物を含んでいます。その分類体系は近年の研究により見直されつつありますが、多様な形態と生態系における役割は、今後も研究が続けられていく重要な課題と言えるでしょう。

もう一度検索