カライトソウ

カライトソウ（唐糸草）について

カライトソウ（学名：Sanguisorba hakusanensis Makino）は、バラ科バラ亜科ワレモコウ属に分類される多年草です。学名にある「hakusanensis」は、この植物が最初に発見された場所である両白山地の白山に由来しています。和名の「唐糸草」は、その特徴的な美しい雄しべを、中国から渡来した絹糸に見立てたことから名付けられました。

特徴

カライトソウは、草丈が30cmから100cm程度に成長します。茎は斜め上か真上に伸び、上部でわずかに枝分かれします。茎は緑色でほとんど毛がなく、根茎は太くなっています。根元から生える葉（根生葉）は、4～6対の小葉を持つ羽状複葉で、小葉は楕円形から長楕円形をしており、縁には鋭い鋸歯があります。葉の裏面は粉白色で、10数対の隆起した側脈が見られます。茎につく葉（茎葉）は根生葉に比べて小さくなります。

花穂は長さ4cmから10cmの細長い円柱形で、垂れ下がります。1個から数個の花穂が散房状につき、淡褐色の綿毛が密生しています。花の色は一般的に紅紫色ですが、白花の個体も見られます。小花は直径約1mmと小さく、花弁はありません。雄しべは6個から12個あり、花のがく片よりも長く、長さは7mmから10mmです。雄しべの先端には黒紫色の点状の葯がついており、乾燥すると黄褐色に変化します。雌しべは1本です。花は花穂の上から下に向かって順に咲いていきます。がく片は筒状の楕円形で、4つの稜があり、反り返り、外側の下部に毛が生えています。

花期は7月から9月で、果実はそう果と呼ばれる種類で、がく筒に包まれており、逆さ卵のような形で革質です。染色体数は2n=28（4倍体）です。

分布と生育環境

カライトソウは日本固有種で、本州の中部地方、特に日本海側（飛騨山脈北部、白山から滋賀県の三国山など）に分布しています。赤坂山の山域が分布の南限または西南限とされています。基準標本は白山で採集されたものです。深田久弥の『花の百名山』では、飛騨山脈の爺ヶ岳を代表する花の一つとして紹介されています。

飛騨山脈の唐松岳の八方尾根（長野県北安曇郡白馬村）には、ワレモコウとの雑種と考えられているハッポウワレモコウ（八方吾亦紅、学名：Sanguisorba x takahashihideoi Naruh.）が分布しています。また、朝鮮半島には、変種のコウライカライトソウ（学名：Sanguisorba hakusanensis Makino var. coreana H.Hara）が分布しています。

カライトソウは、亜高山帯から高山帯にかけての砂礫地、岩壁、草地など、比較的乾燥しない場所に生育します。また、ゴマシジミという蝶の幼虫が、カライトソウの葉を食草としていることが知られています。

種の保全状況

カライトソウは、以下の都道府県により、レッドリストに指定されており、その保全が重視されています。

絶滅危惧種 - 滋賀県
絶滅危惧IB類（EN） - 長野県
準絶滅危惧（NT） - 岐阜県
地域個体群（LP） - 新潟県

参考文献

小野幹雄、林弥栄（監修） 編『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年
清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』（増補改訂新版）山と溪谷社、2014年
須田真一、永幡嘉之、中村康弘、長谷川大、矢野勝也 著、日本チョウ類保全協会 編『日本のチョウ』誠文堂新光社、2012年
田中澄江『花の百名山』文藝春秋、1980年
豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社、1988年
佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年
林弥栄『日本の野草』山と溪谷社、2009年
前沢秋彦『高山植物』保育社、1970年

関連項目

ワレモコウ属
花の百名山

外部リンク

カライトソウの標本 国立科学博物館標本・資料統合データベース
カライトソウの標本（石川県石川郡で1981年8月）に採集 島根大学生物資源学部デジタル標本館
* Sanguisorba hakusanensis Makino （The Plant List）

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