バリャドリッド論争

バリャドリッド論争

バリャドリッド論争とは、1550年から1551年にかけて、スペイン国王カルロス1世の命により行われた、インディオ（インディアス先住民）に関する討論である。この討論は、征服者の暴虐が明らかになるなかで、先住民の地位や権利についての重大な論争を引き起こした。

背景

1547年、著名なアリストテレス哲学者であるセプルベダは、「先天的奴隷人説」を基にインディオを奴隷として正当化する著作『第2のデモクラテス』を発表しようとしていた。これに対し、長年にわたり中米の植民地における虐待を告発していた神父ラス・カサスは、出版を差し止めるための提訴を行った。結果として、カルロス1世はサラマンカ学派の法学者らを中心に委員会を設立し、討論を行うこととなる。

討論の展開

バリャドリッドでの審議会は、1550年8月15日に開かれ、ラス・カサスとセプルベダの対立する意見が繰り広げられた。セプルベダは、インディオを征服することが彼らのキリスト教化に貢献すると主張し、3時間にわたりその理論を展開した。一方でラス・カサスは、皇太子フェリペに宛てた弁明書を朗読し、先住民の文明的生活と自然権を訴えた。両者はそれぞれの著作と自身の経験をもとに激しい論争を繰り広げた。

討論は5日間続き、セプルベダは先住民を「野蛮人」とし奴隷として扱うべきであるとする論陣を張ったが、ラス・カサスは先住民の権利と尊厳を訴えた。両者の意見は真っ向から対立し、特に過去の戦争の正当性に関しては激しい議論が展開された。

総括とその後

討論はソトがまとめる形で報告書にまとめられ、次回の審議会も行われたが、その内容はあまり知られていない。ただし、この論争はラス・カサスの主張が一定程度認められたと考えられている。結果的に、セプルベダの著作『第2のデモクラテス』の刊行は許可されなかったことからも明らかである。

この論争の背景には、人権の尊重への流れがあったと同時に、スペイン国王が植民地における権力を制限しようとする意図があった。特に、征服者が行使していた専制的な権力に対する規制を検討する過程で、ラス・カサスの意見が反映されている。

王政の動き

1556年、フェリペ2世が新たな政策を打ち出した際、ラス・カサスの存在は依然として重要であった。彼の反対により、エンコミエンダの世襲が頓挫し、その結果先住民の権利が一応保障されることとなる。1573年には「インディアス基本法」が制定され、先住民の権利保護が図られたものの、植民地支配に関しては依然として複雑な状況が続いていった。

このように、バリャドリッド論争はインディアスにおける先住民の権利の位置づけを問う重要な討論であり、スペインの植民地政策に大きな影響を与えた歴史的出来事である。

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