サラマンカ学派

サラマンカ学派について

サラマンカ学派は、16世紀から18世紀にかけてスペインのサラマンカ大学を拠点に活動した神学および哲学の学派です。この学派は、特にドミニコ会士を中心に、イエズス会士やアウグスチノ会士と共に構成され、神学の深い研究が行われました。サラマンカ大学内には、特にサン・エステバン神学院とサン・エリアス神学院が重要な拠点となっていました。

学派の概要

サラマンカ学派は、主にドミニコ会とカルメル会の2つのグループに分かれています。特にドミニコ会学派は、経済や国際法についても先駆的な思索を展開しました。この時代の学者たちは、トマス・アクィナスの教えを基盤に学問を進展させており、その影響を受けた学問は今でも重要視されています。

ドミニコ会のフランシスコ・デ・ビトリアは、神学を実践的視点から発展させ、経済と倫理の問題に関して独自の見解を展開しました。彼の講義では、特に植民地に住むインディオ（先住民）の権利を倫理的に擁護する重要性が強調されました。このようなアプローチは、国際法の萌芽を媒介するものであり、近代国際法学への道を開いたのです。

経済学の発展

経済理論に関してもサラマンカ学派は独自の研究を行っています。1535年にビトリアが利子徴収についての講義を行ったことをきっかけに、ドミニコ会学派の中で経済理論が発展しました。特に、ドミニコ会士ドミンゴ・デ・ソトは「公正価値論」を主張し、マルティン・デ・アスピルクエタ（ナバロ）が貨幣数量説を提唱するに至ります。また、ルイス・デ・モリナは貨幣と価格に関する広範な研究を行い、これらの議論はサラマンカ学派の経済理論の基盤を形成しました。

これらの学者たちが提起した「公正な価格」という概念は、自然な交換によって決定されるものであるとされ、経済の実情に基づいた理論の展開がなされました。彼らは、中世のスコラ学の制約から脱却し、商業や金融活動を倫理的に位置づける試みを行ったことから、古典的自由主義の先駆者とされることがあります。

国際法の基礎

国際法の論点に関しては、ビトリアが「インディオに関する特別講義」を通じて、人間の権利を自然権として擁護し、異教徒や先住民の権利についての概念を強固なものにしました。このような考え方は、近代の国際法学においても重要な基盤となり、それに対する彼の影響は長い間受け継がれています。

ビトリアとその後継者たち、特にドミンゴ・デ・ソトの研究は、グロティウスなどの近代国際法学者に多大な影響を与え、彼らの著作は現代においても頻繁に引用され続けています。

主要な学者と業績

サラマンカ学派には多くの重要な学者が存在します。フランシスコ・デ・ビトリアをはじめ、ドミンゴ・デ・ソト、メルチョル・カノ、バルトロメー・デ・メディナなどが名を連ね、彼らの教えや著作は今日までその影響力を持ち続けています。

カルメル会学派においても、同様にトマス・アクィナスの教義に基づく神学研究が影響を与え、更新されていきました。サラマンカ大学の教授陣は、トマスの『神学大全』を基にした包括的な体系を形成し、後世へと伝えています。

サラマンカ学派は、学術的な探求を通じて神学だけでなく、経済学や国際法の発展にも寄与した重要な流れであり、その影響は現在も広がり続けています。

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